日本エネルギー会議

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100年後(6)

6.福島第一原発事故の教訓
 
 21世紀以降、世界各国が協力して対策を実施したとしても、温暖化による被害拡大は避けられず、文明の危機が今から100年後に来ると考えるべきだ。我々はその被害を最小限にしつつ思い切った温暖化抑止策を講じてグリム童話のような結末にならないようにしなくてはならない。
 21世紀終わり頃のスーパー台風の風速は80キロメートルと推定されている。人々はすでに21世紀はじめ亜熱帯の国での被害を映像で見て、このままではそのうち温帯でも、とてつもない被害が出ると感じているが、「自分の生きている間にはそうならない」と何の根拠もなしに思い込んでいる。
 「原発の過酷事故の起きる確率はゼロではないが、そのような事故は現実には起きない」と決めつけ、欧米の実施した対策を直ちに追わなかった東京電力や原子力安全保安院と同じだ。過酷事故対策の困難さの前にたじろぎ、従来の説明にこだわり、出来ることもやらずにタイミングを逃す。温暖化による異常気象対策は福島第一原発事故に至るまでの経緯に驚くほど似ている。
 福島第一原発の事故以前、原発の立地地域の住民や大都会の消費者は、原子力発電所の安全は専門家に任せておけばよいとして、もっぱらその恩恵だけを求める傾向があった。同じように温暖化やその影響についても学者や政治家に任せておいてよいものではないはずだ。見たくないものは見ないという態度を改め、現実を直視しそこから逃げずに最善の対応を取れるかが問われている。
 100年後の時点から振り返って見ると、直ちに取り組むべきことは、温暖化の影響で何年頃にはエネルギー供給面でどの程度の支障が出るかのシミュレーションを行うことだ。石油、天然ガス、石炭など化石燃料のサプライチェーンや沿岸部にある火力発電所や原子力発電所が高潮により何年ごろにはどの程度水没するのか、火力発電所などが水温上昇で出力がどの程度影響を受けるのか、太陽光発電所や風力発電所がスーパー台風や豪雨でどの程度破壊されるかを出来るだけ具体的に予測し、その結果を皆で共有することだ。福島第一原発の事故の教訓のひとつは「常に最悪事態を考えておけ」ということだったはずだ。
 インフラは作り直すとしても10~50年はかかる。温暖化による異常気象がエネルギー供給体制にもたらす被害を前提としないエネルギー政策や計画などは直ちに作り直すべきことを人々は認識する必要がある。そして22世紀も文明を維持するため、いかに将来のエネルギーを確保するかの研究開発にあらん限りの投資をするべきである。著名な物理学者のホーキング博士は、人類は火星への移住の準備をするべきだと主張している。     完

 このシリーズは、昨年7月に世界的に著名な物理学者スティーブン・ホーキング博士が、「地球温暖化は後戻りできない転換点に近づいており、地球上の気温はいずれ250度まで上昇する。アメリカのパリ協定からの脱退で気温上昇がさらに加速する」と警告を発したことにヒントを得て書いたものです。

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