日本エネルギー会議

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百戦危うからず(1)

 「敵を知り己を知れば百戦危うからず」は孫子を基にしたことわざだ。意味は敵と味方の実情を熟知していれば、百回戦っても負けることはない。敵のことも味方のことも知らなければ必ず負けるということだ。
 原子力発電を推進しようとする人々には、電源としての原発の長所や利点を強調するが、短所や欠点にはややもすると認識が甘くなる、あるいは問題を過小評価してしまう傾向がある。もっとも脱原発・再生可能エネルギー推進派はそれ以上にその傾向が強い。これでは双方ともに百戦危うからずどころかいつまでも目的を果たせないだろう。
 原発推進派がエネルギー基本計画に原発の位置づけを求めるのであれば、電源としての原子力発電の短所、欠点をしっかり再認識をするところから始める必要がある。そのうえでそれを克服しうることを示せば長所や利点を云々する以上に国民の原発支持に繋がるはずだ。

(電源としての特性)
・運転は一定出力で行われ、出力調整運転は適さない。
・スタートアップに時間がかかり、フルパワーまで数日かかる。
・一定期間内に燃料取り替えや定期検査のために1ヶ月程度停止しなくてはならない。
・大規模集中型電源のため停止すれば影響は大きく、大きなバックアップ電源が必要である。
・ウランを海外から調達し、濃縮、加工する必要がある。ウランの埋蔵量も限られている。
・経済性を確保するには最低40年は運転を継続する必要があり、その前に廃炉にすれば大きな経済的損失が発生するため、経済性や安全性、環境により優れた電源(新型原発を含む)が現れても容易に交換することが出来ない。

(建設、運転の条件)
・周囲の人口、強固な地盤、冷却水取水などの条件があり、設置出来る場所が限定される。
・環境に放射能が漏れていないか継続的な監視が必要となる。
・大消費地までの長距離の送電線が必要となる。
・運転や緊急対応などのため高度な技術を持つ要員を確保し続ける必要がある。
・周辺自治体の住民の合意を必要とする。運転中に停止や廃炉を要求されることがある。

(経済性)
・近年、太陽光発電や風力発電の発電コストは急激に下がっているが、原発は新規制基準に適合するための安全対策実施により発電コストが上昇し、今後もさらに高くなる可能性がある。一度建設してしまうと運転期間中はそのままの運転コストで他の電源と競争をしなくてはならない。他で事故や深刻な問題があれば、その対策を取り入れることで経済性が失われる。
・発電コストには入れてないが、協力する地元自治体に対する相当額の交付金が必要である。
・廃炉や放射性廃棄物の処理処分の費用が未確定であり、次世代の負担となる恐れがある。
・万一、過酷事故が起きれば、莫大な費用がかかりその時点で経済性を失うリスクがある。
・欧米並みの高い稼働率が実現すれば経済性はあるが、従来の実績では経済性は低い。

(安全性)
・原発のような機械ものに絶対安全はありえず、確率は低いとはいえ過酷事故の可能性があり、過酷事故を起こせば住民の避難など広範囲に甚大な被害が発生する。
・自然災害の規模やサイバーテロを含むテロの可能性は未知数のところがある。

(困難な合意形成)
・福島第一原発の事故処理や避難が続いており、国や電力会社に対する国民の不信はいまだに払拭されていない。
・欧州、台湾、韓国では脱原発の動きがあるが、何故日本も脱原発しないのか、何故再生可能エネルギーで行かないのかという疑問を国民が抱いている。
・国民の多くが放射能や被ばくに漠とした不安を抱いている。
・運転をすることで発生した使用済み燃料の処理処分について方向性は示されているが実現性が明らかでないため、原発の運転そのものを危惧する国民が多い。
・核燃料をリサイクルするための使用済み燃料再処理をすればプルトニウムが発生し、外国から疑念を持たれないよう消費しなくてはならないが、もんじゅ廃炉で見通しが立たなくなっている。
・運転が終了した後、廃炉となるが、これに伴い放射性廃棄物の処分場が必要となるが、これを受け入れるところが見つからない。
 
 これらの短所、欠点は開発当初から分かっていたことも多く、それなりの対応策を講じてきたが、まだ不十分な点がある。今後これらをどのように克服するか処方箋を書く必要があるが、それはいつまでに出来るのだろうか。難しいからといって従来のように先送りをすることを国民は容認しなくなっている。
 続いては火力発電、水力発電、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーについてもその短所、欠点を示し公平を期さなければならないが、それは次回以降とする。     (つづく)

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