日本エネルギー会議

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百戦危うからず(3)

 「敵を知り己を知れば百戦危うからず」意味は敵と味方の実情を熟知していれば、百回戦っても負けることはない。敵のことも味方のことも知らなければ必ず負けるということだ。
 原発や再生可能エネルギーを推進しようとする人々は、火力発電所に対して厳しい意見を述べることが多いが、現実は日本をはじめ各国が電力供給の大半を火力発電に依存している。火力発電には燃料によって、石炭、石油、天然ガス、バイオマスに区分されるが、総じて温暖化防止の観点からは劣勢となっており、関係者は生き残りをかけて高効率化や二酸化炭素の貯留などの技術開発をしている。火力発電に関して高い技術を有する日本は火力発電の短所や欠点をしっかり把握して、その解決策を見つける努力をしていくべきである。

(電源としての特性)
・燃料を海外から調達する必要があり、化石燃料は埋蔵量も限られている。
・化石燃料は国際的に価格が変動しやすい。また、石油や天然ガスは採掘、輸送などに地政学的リスクがある。
・火力発電の主要な燃料の一つである天然ガスは、2週間分しか備蓄できず、世界情勢によって輸入が止まれば、約2週間で発電所が停止せざるを得ない。
・小出力から大出力までの設備が可能であり、出力は安定しており、同時に細かな出力調整も出来る。短時間でスタートアップ出来てフルパワーになるのも速い。そのため不安定な電源のバックアップに使われることが多く、稼働率は上がらなくなる。
・一定期間内に定期検査のために1ヶ月程度停止が必要となる。
・大規模集中型電源のため停止の影響は大きく、バックアップ電源が必要である。
・長い歴史で技術的には完成度が高い発電方式であり、改善はハードルが高い。

(建設、運転の条件)
・しっかりした地盤、冷却水取水などの条件があり、設置出来る場所が限定されるが、大都市近傍でも建設が可能である。
・環境アセスメントをクリアすることや監視体制が必要となる。
・発電所に隣接して広い燃料貯蔵場所と荷下ろしの施設が確保されなくてはならない。特に天然ガスは特別な貯蔵施設が必要となる。
・大気汚染や温排水に関して周辺自治体の住民や漁業者の合意を必要とする。
・長期契約などによる燃料コストと供給の安定を確保する必要がある。
・石炭やバイオマスについては焼却後の灰の処分あるいは再利用が必要となる。
・大消費地から遠くに建設する場合、長い送電線が必要となる。

(経済性)
・従来、火力発電は原発に次いでコストが安いとされてきた。途上国が発展するに伴い、天然ガスなど燃料価格が高騰する可能性がある。発電コストに占める燃料費の割合が多いため、影響が出やすい。
・炭素税などが出来るとコスト競争力が低下する可能性が高い。
・二酸化炭素排出抑制が義務付けられた場合は、処理装置あるいは貯留機器を付加することでコストがかなり上昇する。
・高効率の新しい発電所と比較すると古い発電所の発電コストは大きく差がある。
・バックアップの役割など定格出力運転が出来ない場合、稼働率は下がりコストは高くなる。

(安全性)
・火力発電所はほとんどが沿岸部にあるため、津波、高潮などの影響を受けて損傷しやすい。
・自然災害の規模やサイバーテロを含むテロの可能性は未知数のところがある。
・大地震、津波、設備事故などで石油や天然ガスの貯蔵タンクなどに火災、爆発、海洋汚染の恐れがある。

(困難な合意形成)
・二酸化炭素排出量の多い石炭火力について廃止を求める動きが世界に広がっているが、日本でも環境省が石炭火力の新増設に異議を唱えている。
・都市では大気汚染、地方では景観に関して住民からの反対が起きやすい。。

(バイオマス火力発電について)
  バイオマスの燃料は間伐材、チップなどだが、周辺からの燃料供給の継続性の問題がある。もっぱら外国から輸入したヤシガラなどを燃料に使うバイオマス発電所もあるが、それらは他の化石燃料と同じリスクを背負うことになる。また、植物由来の燃料といっても燃やせば二酸化炭素が発生する、燃料供給元での食糧生産との競合、自然破壊を伴う開発の問題もある。

 これらの短所、欠点は開発当初から分かっていたことも多く、それなりの対応策を講じてきたが、まだ不十分な点がある。今後これらをどのように克服するか処方箋を書く必要があるが、それはいつまでに出来るのだろうか。続いては水力発電についてもその短所、欠点を示し公平を期さなければならないが、それは次回以降とする。
 (つづく)

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