日本エネルギー会議

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戦争調査会と原発事故原因の探求(2)

 戦後作られた戦争調査会は五つの部会からなっていた。第一部 政治外交、第二部 軍事、 第三部 財政経済、第四部 思想文化、第五部 科学技術の五部会である。福島第一原発の事故をさまざまな角度から検証するにはどのような部会が適当なのかを考える必要がある。また、事故を未然に防ぐどのような機会があったのかについても追跡することが必要だ。
  
 福島第一原発の事故に関する調査会の部会案は次のとおりだ。
         
第一部 政治外交         第四部 産業
第二部 行政法律         第五部 社会経済
第三部 学術           第六部 思想文化

 以下、何故この六つの部会としたかの理由も含め、各部会で取り上げる調査内容はどのようなものを想定しているかについて概略を述べる。

 第一部会は我が国への原発導入時から福島第一原発の事故に至る間、政治外交によっていかにして福島第一原発の事故の下地がつくりあげられたかを調査する。明治時代から科学技術を利用したさまざまな産業が国産化を目的に欧米から我が国に取り入れられた。まず、繊維産業が富国強兵のための外貨を稼ぐ手段として我が国に最も適した産業として政府の力で進められ、続いて鉄鋼、造船など重化学工業が自前の軍備のために積極的に導入された。
 戦後は世界のエネルギーが石炭から石油へと移るなか、経済発展に欠かせないエネルギー資源を確保する手段として一部の政治家が原子力発電に目をつけた。アイゼンハワーの「アトム・フォー・ピース」も核の不拡散を狙った政治的な方針であったが、日本においても原子力発電の導入は国の存立、繁栄の基本となるべき政治目標となった。
 また、外交においてもエネルギー資源を海外に全面依存していることが、我が国の弱みとなっていたため、これを補う手段として原子力発電が期待された。また、原子力発電を導入することで核保有の潜在的能力を持てることも一部の政治家は期待していた。このように原子力発電の導入は極めて政治的に行われた。
 我が国には「為政者とは国民の幸せための善政を行う者」という東洋思想が古い時代から定着しており、政治家は自らの利益は考えずに国民を幸せにするために全力を尽くすはずとの前提に立って、「お上に任せる」態度が国民の間に浸透している。
 原子力予算を初めてつけた政治家たちも、何も知らない国民の意見や合意を得るまでもなく、良いと思った政策を推し進めることを国民に知らしめることより優先してもよいと上から目線で考えていた。これは政治家だけでなく官僚にも見られる態度である。
 これは原子力開発において一貫して今日まで見られるものであり、この考え方に立てば、どうしても開発は前のめりになり課題は先送りになる。不都合なことは言わず、メリットを強調することになる。
 原子力発電の導入が国策民営となったことにより、政党、官僚機構、電力会社、原子力産業、大学、自治体、労働組合などが、国の全面的支援を前提とする原子力開発を推進してきた。その中で、彼らは自らの利益を確保し、自らの権益を拡大させ、勢力の拡大と存立基盤の強化を行うことで政治力を身につけてきた。
 この政治力で開発に立ちはだかる資金獲得や立地などの諸課題を克服出来たことは事実だが、同時に慎重であるべき原子力開発にも負の影響を与えた。 詳しくは第一部会の調査に期待することになる。
 (つづく)

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