日本エネルギー会議

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百戦危うからず(4)

 「敵を知り己を知れば百戦危うからず」 意味は敵と味方の実情を熟知していれば、百回戦くも負けることはない。敵のことも味方のことも知らなければ必ず負けるということだ。
 水力発電は最も古くからある電源であり、発電コストも安い。しかし水力発電はその功績にもかかわらず、もはや開発余地がなく過去のものであると言われてきた。しかし、現実には水力発電が日本の電力供給の1割を占め、再生可能エネルギーの中核として供給を支えているのも事実だ。
 また、瞬間的にスタートアップ出来ることから、出力一定運転をさせている原発や出力不安定な再生可能エネルギーの欠点をカバーしているのも揚水方式を含む水力発電である。地球温暖化対策が叫ばれる今日、二酸化炭素を出さず出力調整も容易で、燃料費もかからないなど優れた電源である水力発電を見直すべきだとの意見も聞かれる。今後、再生可能エネルギーを主要電源にするためにも、水力発電の短所や欠点をしっかり把握しておくべきである。

(電源としての特性)
・水力発電はどこにでも作れるものではなく、地形や気象条件を選ぶため、建設出来る地点は限られる。特に大出力のダム式水力発電所は広大な土地を必要とし、国内では大規模な開発地点を見つけるのは困難である。
・日本には川幅の広い河川は少なく、峡谷にダムを建設して貯水する方式以外は大出力の水力発電所は出来ない。
・建設には長い年月が必要となり、投資額も大きい。
・一定期間内に発電機など設備の定期検査で1ヶ月程度停止しなくてはならない。
・渇水期には発電が出来なくなる可能性がある一方、雨が降りすぎても今度はせっかくの水を放出しなくてはならない場合もある。冬期の積雪は貴重な資源である。
・ダム式の場合、土砂の堆積があり、これを定期的に浚渫してやる必要がある。

(建設、運転の条件)
・ダム式の場合、水没する集落ごとの立ち退きなどを求めなくてはならない。
・山奥を通り大消費地までの長距離の送電線が必要となる。
・国立公園などで景観破壊が起きることに対してアセスメントを受ける必要がある。
・ダム式の場合、下流の人々の生活にも影響を及ぼすため地元住民の了解が必要である。

(経済性)
・水力発電は燃料費がかからず、原発と火力発電の中間程度のコストで、太陽光発電の三分の一、風力発電の二分の一程度である。一度建設してしまうと運転期間中はそのままの運転コストが続き、建設費を償却したあとは限界費用ゼロ近くで発電が出来る。
・発電量は水量により決まり、水量は雨や雪といった気象条件で決まるため、他の再生可能エネルギーと同様、収入は天気任せのところがある。
・自動運転、遠隔操作など省力化技術が進んで、経済性は以前より高くなっている。
・水車などを新しく開発された性能の良いものに交換することで出力を増加出来る。
・揚水式の水力発電所は需給調整のために重要な役割を果たすが、揚水に電気を使用するため、揚水式発電所で発電すると3割の電力が失われる。

(安全性)
・水力発電所はほとんどが山間地にあるが、一斉放流により下流に被害を及ぼす恐れがある。
・自然災害の規模やサイバーテロを含むテロの可能性は未知数のところがある。
・大地震などで突然崩壊する恐れがある。

(困難な合意形成)
・ダム建設のために広い地域が水没する。その中に集落などがあれば立ち退きをしてもらわねばならず、住民の合意が進まない場合がある。
・新設には地元や観光業からの反対が予想される。

 これらの短所、欠点は当初から分かっていたことも多く、それなりの対応策を講じてきたが、まだ不十分な点がある。今後これらをどのように克服するか処方箋を書く必要があるが、それはいつまでに出来るのだろうか。             
(つづく)

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