日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

廃炉のコストダウンを

 これからの日本では、原発関連事業は建設より廃炉に注目が集まるようになる。現在までに福島第一原発6基を含む17基の商業用原発と「ふげん」と「もんじゅ」の2基の研究開発用原発の合計19基の廃炉が決定し、一部は既に工事が始まっている。原子炉メーカーやゼネコンではこれをビジネスチャンス到来と受け取る向きが多いが、国民の側からすれば、すべて電気料金か税金として費用を負担させられることになる。
 特に事故を起こした福島第一原発の廃炉費用が2兆円から8兆円に膨らむと聞けば、あまりの額に唖然とするばかりだ。それでも、燃料デブリの取り出し方法など廃炉の詳細はまだ決まっておらず、経産省は合理的な見積もりは現段階で困難としている。
 廃炉にかかる費用は経産省の試算によれば、標準的な原発の場合、1基当たり550億円程度で、日本にある軽水炉原発をすべて廃炉したとすると、約3兆円かかるとしている。電力各社が示しているところでは1基当たり323~885億円。これとは別に使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の処理処分にも巨額の費用がかかるが、その方法も含め、いまだ不確定な部分が多い。
 原発以外にもウラン濃縮施設、使用済み燃料再処理施設、燃料製造施設、放射性物質を取り扱う研究施設、大学の教育用原子炉、放射性廃棄物の貯蔵施設なども役目を終えれば廃炉と同じような措置がされることになる。地元は廃炉期間中も、今まで交付されてきた交付金や税金に代わるものを求めている。このように考えると、廃炉などにかかる国民の負担は少なくとも20兆円程度は覚悟しておかなくてはならない。電力会社には廃炉積立金があるというものの、それだけで足りそうもない。
 この負担を軽減するには、ハード、ソフト両面で廃炉のコストダウンに挑戦することが必要となる。ハード面ではAIやロボットの活用による人件費の削減、被ばく低減、工事期間の短縮、環境負荷の低減などが期待されるが、新たな投資を必要としないソフト面の工夫にも光を当てる必要がある。
 まず、廃炉の方式には「完全密閉」「遮蔽管理」「撤去解体」の三方式があるが、日本では「撤去解体」へのこだわりが強い。撤去後、新たな原発を建設出来るようにするには、放射性廃棄物の処分先を探さねばならない。本当に処分場が見つかり、次の原発建設が決まるまで他の方式を選択することも可能ではないか。
 次にクリアランスと呼ばれる放射性廃棄物の裾切りの問題がある。放射性廃棄物のうち、放射能濃度が極めて低く、人の健康への影響がほとんどないものは、国の許可・確認を得て、普通の廃棄物と同様に再利用や処分が出来ることになっている。福島第一原発の事故後の除染基準もそうだが、その基準は厳しければよいというものではなく、科学的かつ、経済合理性があるものであるべきだ。もっと厳しくという声もあるが、わずかな基準値の差が巨額な費用となって跳ね返ってくる。必要以上に厳しくすれば廃炉計画が頓挫してしまう。それは本末転倒だ。
 工事を指名でなく競争入札にして、外国企業の参入促進をすることも有効だ。従来、原発を建設した原子炉メーカーとゼネコンが特命受注することが多いようだが、これに風穴をあけるのは発注者である電力会社の役目だ。日本原電が東海発電所の廃炉でやっているように社員による直営工事部分を入れることもよい方策だ。
 高線量の部分はすぐに取り掛からずに線量が落ちるのを待つのも方法だ。建設時には「時は金なり」だが、廃炉の場合は時が味方する。経験を積めば、どのような廃炉工程が一番コストが安くなるかわかってくる。また後年ほどAIやロボットの進歩による恩恵も受けることが出来る。放射性廃棄物となる原子炉まわりなど、処分場探しのペースとも合致しなければ、焦って解体する意味はない。
 今まで、原発の建設、修繕、改造について、電力会社は原子炉メーカーやゼネコンの見積りに対し、切り込んだ査定が出来ていたかといえば、必ずしもそうではなかろう。製造方法や施工方法について電力会社は経験が少なく、工事費は総括原価方式で電力料金に反映すれば済んでいたからだ。廃炉については「いくらかかる。ああそうですか」というのはもう止めた方が良い。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter