日本エネルギー会議

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おかしな主張

 産経新聞がおかしな主張をしている。同紙は4月8日の「主張」欄で、日本原電が、茨城県東海村にある同社の東海第二原発の再稼働や運転延長に関し、東海村の他、半径30キロ圏内の5市から実質的な事前了解を得ることになる新たな安全協定を結んだことに対して「新協定は東海だけに止め、他の原発立地地域での安易な導入には慎重であるべきだ」と書いた。
 さらに、「福島第1原発の事故以来、事前了解の範囲拡大を求める声が原発の周辺自治体から上がるようになっていたが、今回の日本原電の対応で、他電力の原発に対しての受諾圧力が高まる。電力会社と周辺自治体とのコミュニケーションが増すことは歓迎すべきだが、自治体数が増えれば意見の一致は、おのずと遠のきがちになる。議論もゼロリスクの希求に傾きかねない。これではベース電源としての役割が期待される原発の実力が発揮されにくくなってしまう」と主張している。
 その理由として日本原電が計6市村の首長との間で安全協定を結んだ背景には、「原発30キロ圏内に全国最多の96万人が暮らすという地域の特殊事情が存在している」としている。産経新聞の主張は、経済産業省が今回のことについて、盛んに特殊な例と言って予防線を張っているのと相通じるものだ。
 どの範囲の市町村まで安全協定を締結するかは、昔からある問題だ。私が20年以上前に敦賀原発に勤務していた頃、敦賀半島の対岸の越前町は、「敦賀原発は海を挟んで目の前にあり、敦賀市中心部より近いのだから、日本原電は越前町に対して敦賀市と同じように安全協定を結ぶべきだ」と盛んに主張してきた。現在も、Jパワーの大間原発と函館市が裁判沙汰になっており、九州電力の玄海原発、中部電力の浜岡原発なども周囲の市町村から安全協定の締結を求められている。周囲の市町村は、自分たちが国から避難計画策定を義務付けられているのだから、電力会社に原発の建設や運営などに物申せるように安全協定を締結するのが当然だと考えている。
 「原発30キロ圏内に全国最多の96万人が暮らすという地域の特殊事情」だと言うのであれば、他の原発で30キロ圏内に暮らす数万人から数10万人の住民はどうでもいいのだろうか。国や産経新聞の主張を聞いていると、2017年4月に東日本大震災をめぐり「東北で良かった」などと発言したため責任をとって辞職した今村復興大臣のことを思い出す。なんとか再稼働への条件をこれ以上厳しくしたくないという魂胆が見え見えだ。これだから、国に対する住民の抵抗が収まらないのだ。
 私は今回の範囲拡大で、東海第二原発は住民に対する公平さという点で、業界として「ひと皮むけた」のであり、これで後ろめたさを持たずに再稼働への道筋が付けられたと見る。どの原発も東海第二のように正々堂々とやるべきで、今まで不自然だったことが周辺の住民から不信感を持たれる原因になっていた。
 産経新聞は「そもそも、原発の安全協定に法的根拠は存在しない。電力会社と立地自治体の間で交わされた紳士協定なのだ。法の裏付けを欠く慣行的な約束が、原発を保有する電力会社の死命を制するまでの力を持ってしまっている現実こそが問題なのだ。国が前面に立って解決を図るべき重要課題である。」と主張しているが、国がやるべきことは安全協定に法の裏付けをして、避難計画策定義務とのバランスを取ることだ。それをやらないから、地元が電力会社の死命を制するまでの力を持ってしまう。
 法的裏付けを持った協定であれば、立地市町村は今のような理不尽な態度は取れなくなる。法的裏付けのない紳士協定ほどやっかいなものはない。どこまで注文をつけることが出来るかが決めてないからこそ、言いたい放題になる。
 そもそも、原発は万一の事故に備えて人口密度の低いところに建設することになっている。
 運転開始から40年も経って、建設当時より周囲の人口が増えてしまい、東海第二原発の周辺をびっしりと住宅街が取り囲んでいるような現状は、建設許可の条件から逸脱してしまっており、論理的には東海第二は東海村と周辺の人口増の時点で廃炉にする必要がある。冷たい言い方をすれば、原発周辺の急激な人口増加に制限をかけなかった国や日本原電が甘かったのだ。 

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