日本エネルギー会議

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迷惑な賠償

 いまだにバリケードで道路が封鎖されている帰還困難区域へ避難者が立ち入るには、原則として内閣府の受付センターで事前許可を取る必要がある。立ち入りの回数は年間30回、1回あたりの立ち入り時間は6時間以内に制限されている。また、立ち入りの前に中継基地に立ち寄って、許可証の確認、装備の支給、線量計の貸与を受け、区域退出後は再び中継基地に立ち寄って、線量計の確認と返却、タイヤや靴底の汚染検査、使用した装備の返却をするようになっている。
 一時立ち入りのため、県内外の避難先からマイカー、あるいはバスで向かうことになるが、マイカーの場合はガソリン代が東京電力から支給される。今年の3月までは東京電力はこれらの費用を立ち入りのあるなしにかかわらず、数年間分一括払いで賠償していたが、新年度から3ヶ月毎に避難者に申請させて内容審査をして支払うように変えた。一時立ち入りは原則月に1回、合理的な理由があれば複数回も認める。ガソリン代は距離によって支払うこととし、1キロメートルあたり22円。高速道路料金は現在のところ、被災者に対して国が免除しているので、賠償の対象とはならない。
 詳しい内容を電話で東京電力に問合わせたところ、距離は避難先から自宅までの車による走行距離とし、申告した距離について東京電力で確認をする。「一時立ち入りの事実についてはどのように確認するか」と尋ねたところ、「立ち入りをしたかどうかは自己申告」という返事だった。月2回以上立ち入る場合にはその理由を書くようにとのことだ。賠償の根拠がゴルフのスコアのように、自己申告でよいとは驚いた。
 帰還困難区域に立ち入るには、その都度申請が必要で、復路の中継基地で被ばく線量を記録した用紙の控えを配布される。それが立ち入りをしたという証拠となる。それをコピーして費用申請に添付させるようにすればよいと思うのだが、それは求めないとのことだ。避難者側からすれば手間が省けてありがたいが、賠償金の支払い方法としては疑問が残る。
 東京電力は申請のルールや基準を事細かに決めているが、時々おかしなことをする。例えば、避難先に移住するため新たな家を取得した場合、建築業者や不動産業者の見積もりだけで金が支払われ、後に領収書を提出すればよい。本人名義の不動産の登記簿の写しの提出などは求めていない。家を建ててすぐに転売し現金化しても、東京電力はあずかり知らないということだ。
 今回の一時立ち入りのガソリン代(郡山市に避難していれば、往復で1回10000円程度)にしても、年間12回分は、申請がされれば何の証拠も示さずに支払われる。避難を続ける人にとっては一種の既得権になる。これを聞きつけた避難解除された地域の人たちは、東京電力はずいぶんいい加減な金の払い方をすると思うだろう。まして一般の県民が知ったらどう思うだろうか。
 避難者はこれまでも周囲の人たちから、「たくさん賠償金をもらっているのでしょう」と言われ、小学生が同級生に「おごれ」と要求されることまで起きた。避難者は自分たちが避難者であることを口にしないようにしているが、誰が避難者か、どのような賠償があったかは少しづつ漏れて広がっていく。申請にあたって立ち入りの証拠となるものを添付しなくてもよいという措置は、避難者にとって周囲からの嫉妬を巻き起こす迷惑な賠償のやり方なのだ。  

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