日本エネルギー会議

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戦争調査会と原発事故原因の探求(7)

 福島第一原発の事故に関する調査会の第六部会は、我が国への原発導入時から福島第一原発の事故に至る間、我が国の思想と文化において、いかにして福島第一原発の事故の下地がつくりあげられたかを調査する。その内容は概略次のようなものとなろう。

・日本は古代から中世にかけて制度、法律、宗教、技術など国家形成のための一切合切を中国から輸入した。幕末には鎖国を解き、文明開化と称して欧米から議会制度、教育制度、市場経済、蒸気機関、紡績、製鉄、造船など科学技術を貪欲に取り入れ、太平洋戦争に敗れた後は敵国であったアメリカから民主主義、生産技術、民主教育、大量生産大量消費によるアメリカ式生活をそのまま取り込んだ。

・戦後は特に、国の存立にかかわるエネルギー資源を海外に全面依存していることに対する危機感が強く、自前のエネルギーを持つことは国の悲願であり続けている。このような背景の下、イギリスやアメリカで開発されたばかりの原発を極めて短時間の検討の末に取り入れた。東海原発、敦賀原発1号、福島第一原発、美浜原発などがそれにあたる。

・日本が科学技術に接したのは150年以上も前の幕末であるが、科学そのものの誕生はさらに中世の西欧に遡る。科学は中世のキリスト教徒が、聖書で書かれていることが真実であることを証明するために追求を続けた結果産まれた。科学者は長い闘いの末、真実が聖書に書かれたものとは違うことを教会に認めさた。この試練を受けていない日本は、科学技術が入って来ても、物珍しいもの、便利なもの、利益を生み出すものとして扱い、科学技術の本質に対する理解が疎かにされているように見える。

・日本では大自然は恵みを与えるとともに、場合によっては甚大な被害ももたらすものとして受け入れるしかないという観念がある。一方で、近年の土木建築技術などの向上によって、建物や設備の耐震性には自信を持つようになっていた。

・日本人は伝統的に万一に備えてのリアルな思考が出来ない。これは外国からの侵略、内戦が少なかったこと、自然の脅威を何度も経験して自然にはどのようにしても対処出来ないという諦観を持ってしまったからである。また、大規模な被害想定をすることで、いらぬ不安を掻き立ててしまうのではないかと心配もする。一事が万事と考え、小さいことの積み重ねを大切にする。この結果、手厚い安全対策をしているつもりが、コストばかり掛かり焦点の定まらない手ぬるい対策をやり続ける傾向がある。

・日本人は好奇心が強く、外国に学ぶことに熱心であり、外国崇拝をしがちであるが、一度目標を達成するとその成功体験に浸り、もう学ぶものはないと尊大になりがちである。海外で問題が起きても日本は事情が違うと言い、教訓をとりいれたがらない。その間にも世界は進歩し日本は取り残されるということを繰り返している。日本にもアカデミズム、プロフェッショナリズムがあるが、学問は学問として考え、現場から遊離していることが多い。

・日本人は諸問題に対し、取らねばならない対策が分かっても、組織の秩序は乱したくない、慣例に反しないようにしたい、メンツにこだわるなどを優先させて対策の実施を先送りしてしまいがちである。こうした判断が時には致命傷となることがある。

・日本人は集団に属することを好み、自分の意見を明確に主張することを控えやすい。リーダーも全員参加を求め、集団内部の和のためには全員が我慢をしたり、不合理なことを敢えてしたりする。こうした非合理的な判断はしばしば手痛い被害をもたらしてきた。

・日本人の思考は論理的であるより感情に支配されやすく、一度大きな失敗をすると、ひどいトラウマになる。論理性より精神性をより考えるため、本来は結果が悪ければ評価してはならないものを、努力したということで評価してしまう場合がある。

・日本人は、科学技術が合理性を持つものであり、徹底したリアリズムであることを忘れ、根本ではなく小手先の対策で済ましたり、現地確認もしないで安全上の問題はないと判断したり、精神力で物量的、技術的な劣勢を跳ね返せると考えたり、深刻な事故の対策を行うよりも「起こりえない」として問題を矮小化したり、ないものにすることがある。

・一方で、日本人は安全であるうえに安心まで求める。科学的事実に対しても、体験したことがない場合には少しでも不安な要素があると、往々にしてゼロリスクでなければ認めないと主張することが多い。

・日本人は横断歩道で信号機が青になれば、自分で左右を確認することなく一目散に渡り始める。自ら確認はせず、権威にすがり、かつ自分たちは護られるべきだと考える。こうした国民性は、幕藩体制以降数百年にわたって培われてきたものであり、お上を信じて委ねることが出来れば楽だと考えている。事実を検証するより空気を読むことに熱心で、巧みなあるいは強引なリーダーに騙されやすい。このような他人任せが、戦争、自然災害、大事故によって国の存在を危うくする下地をつくっている。        

(つづく)

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