日本エネルギー会議

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用意周到な男

 昼間は暖かくても夜になるとひどく冷え込むのが福島県の山間部だ。そこに40代で都会からUターンし、土建業のかたわら不動産も営む男は、福島第一原発の事故でも自主避難はしなかった。男は墓地の造成の仕事をした時、一番良い場所に自分のためにと墓地を一区画確保した。50代になった男は、自分の墓が出来たと私に写真を見せ「これでいつ死んでも、妻や高校生になった子供に迷惑をかけないで済む」と言って笑った。世の中には用意周到な男がいるものだ。以前、市民団体で講師をした際に、「放射性廃棄物処分場は例えるならば墓地のようなものだ」と発言しところ、主催者から「墓とは縁起が悪い」という反応があったことを思い出した。
 日本は原子力開発のスタートに当たってひとつの誤りをした。それは原発の導入して発電することを急ぎ、使用済み燃料や放射性廃棄物の処分場の確保を原発の建設とセットにしなかったことだ。日本が原発建設に着手したのが昭和30年代。メディアの先導で国中が原子力の平和利用に沸き立ち、日本初の商業炉であった東海発電所には時の皇太子殿下(今回退位される平成天皇)も視察された。原発は運転期間の延長をしたとしても、いつかは安全性、経済性の点から廃炉となり、放射性廃棄物が将来問題になることはその頃からわかりきっていた。あの時代であれば、処分場として全国の鉱山跡などを数多く候補地として国有地にして確保しておくことは出来ただろう。埋設試験も長期にわたって可能だったと思われる。国や原子力委員会は電力会社に対し、処分場の目処が立たなければ、完成した原発の運転開始を認めないという条件をつけるべきであった。
 現在、全国の原発の廃炉計画を原子力規制委員会が次々と審査して承認しているが、処分場の確保や資金確保を前提としておらず、再び過去の過ちを繰り返していることになる。規制委員会は東海第二原発の再稼働の審査条件に、追加工事のための資金確保を求めているが、再稼働のための工事資金だけに担保を求めるのもおかしな話だ。
 地元が停止した原発をそのままにする、あるいは廃炉工事で出た放射性廃棄物をいつまでも構内に仮置きすることに同意するとは思えない。どこにも処分場が探せなかった場合は、使用済み燃料の中間貯蔵施設ばかりが増え、廃炉は中途半端なかたちとなる。これでは原子力開発推進に協力してきた地元も、原発を誘致したことを悔やむようになるだろう。半世紀以上前に、準国産エネルギーである原発の国産化という偉業の影で起きた誤りは、その後もずっと尾を引き、解決はむずかしくなっていくばかりだ。 

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