日本エネルギー会議

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廃炉におけるジレンマ

 福島第一原発の廃炉の現場では、作業員の放射線被ばくを低減させながら原子炉内部の調査や燃料取り出しをするためにロボットなどに巨額の資金が投入されて、さながら無人化、自動化のテスト場のようになっている。ここで気になるのは、従来の原発の建設、定期検査と同じように開発費用は電力会社が支払い、その成果は電力会社の計画達成に使われるものの、ノウハウは東芝や日立などメーカーのものになることだ。メーカーはリスクを伴う開発費を電力会社に依存出来る。これが自動車など普通の製造業などとは大きく違うところだ。 
 メーカーは得たノウハウを他の顧客にも使って儲けることが出来る。総括原価方式が許されていた電力会社は、これらの開発費も電力料金で回収出来たためそれを許しきてきた。今後は電力自由化の中で、総括原価方式はなくなり、電力会社も研究開発成果に対する権利を要求するようになるかもしれない。
 原発の場合、軽水炉は沸騰水型と加圧水型の二つがあり、どちらを選択するかで自動的にメーカーが決まってしまう。定期検査や機器などの修理、入れ替えについて、建設したメーカー以外に発注することはまずない。海外メーカーが入ることがあるが、それは極めて稀なことだ。したがってメーカーは一度建設を受注してしまえば、あとは競争相手がいない市場を完全に独占出来る。それだけに各サイトの初号機をどのメーカーが取るか、激しい競争が行われる。
 この関係は廃炉にまで適応される必要があるのかという疑問がある。廃炉にかかる費用は電力料金に反映されるので、消費者としては出来るだけ安く廃炉をやってもらう必要があるが、福島第一原発の廃炉ではやはり沸騰水型軽水炉を建設したメーカーである日立、東芝の独壇場になっている。
 沸騰水型の場合、建設に2社が入った場合、運転中も偶数号機、奇数号機で分けたり、原子炉とタービンに分けたり、メンテナンスを担当するメーカーの割り当てが行われてきたが、廃炉についても競争はさせずに割り当てになっている。それぞれの受け持ちの部分での手柄争いはあるものの、ひとつの工事を競争入札することはしていないようで、契約価格がメーカーの言い値になる下地がある。もし、日立と東芝の原子力部門が合体したり、両社が談合したりすれば、事態はより深刻になる。
 従来も建設から定期検査まで、電力会社がメーカーの見積もりをどの程度まで査定出来ているかは不透明だった。建設がほとんどストップしている現状では、メーカーは売上を新規制基準に合格するための改造工事と廃炉に依存しており、ここで電力会社が厳しい査定をするとメーカーが系列企業を含めた体制を維持出来なくなり、国内の原発産業の技術が失われてしまう。
 あちらを立てればこちらが立たない。電力会社とメーカーが抱えるこうしたジレンマの解消のために、両者が結託して消費者にツケを回せば廃炉費用の大幅な増加となり、最終的に原発に対する国民の支持を失うことにつながる。そうならないためには、最近、火力部門などで導入を始めた「トヨタ方式」のように定検費用半減くらいのことを、廃炉部門を含めた電力会社とメーカーの原発部門が自主的に努力していくことが不可欠である。

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