日本エネルギー会議

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最新科学技術と人々の受容性(1)

 日本では最新の科学技術が人々にどのようにして受け入れられるのか。幕末から明治維新にかけて麻酔、エレキテル、写真、蒸気機関車など数多くの例がある。戦後も化学肥料、殺虫剤、発がん性物質、遺伝子組み換え作物、コンピュータ、インターネット、原発、資源開発などの例があり、最近では人工知能、生命科学、ロボット、深海や宇宙の開発、AIなどが受け入れられようとしている。
 人々が新しい科学技術を受け入れる条件について整理することで、依然として候補地が見つからない高レベル放射性廃棄物処分場など原発関連の施設を受け入れてもらうためのヒントを得ることが出来るのではないか。
 
受け入れの条件
1.物理的、社会的、経済的な基盤の存在
  新しい科学技術はそれがいかに優れたものであっても、受け入れる基盤や素地がなければ受け入れることは出来ない。それは地理的な条件あるいは気温など自然環境以外にも、社会的な条件として科学技術を理解するのに必要な教育水準や運営やメンテナンスのための工業水準、また、経済的な条件として導入に必要な資金と運営資金が確保出来るかなどがある。幕末から明治期に日本が急速に西欧からの科学技術を取り入れることが出来たのは、江戸時代末期に、その受け入れ条件が整っていたからと言われている。
  この基盤も未来永劫変わらないものではなく、基盤が損なわれたり、新たに作られることがある。
  
2.現状に問題があること
  現状に満足しているところには新たなものは受け入れられない。現状で問題が顕在化あるいは顕在化しそうになっていること。あるいは我慢の限界に近づいている、状況変化に直面して現状が維持困難になっていること。ただし、今までまったく考えられなかったような新たな価値や恩恵を提供するものであれば、この条件はない。

3.国民の理解
  民主主義国家である今日の日本では、国民の理解が得られることが条件となる。理解に至るには
(1) 新技術を受け入れることで国民の多くにメリットが生ずること。
(2) デメリットに対して国民が許容すること。メリットやデメリットが極端に偏在せず公平感があること。
(3) 高度な科学技術はブラックボックス化が進み、国民が直接それを理解することが困難になるため、科学者、技術者、実施主体に対する信頼感が必要となる。
(4) 新技術が国や世界、あるいは子孫のためになるとの大義があること。逆に子孫に負の遺産となったり、私企業の利益のためだったりすれば拒否される。
(5) 外国での実績があること。日本人の場合は受け入れ条件となりやすい。
(6) 時間をかけ、わかりやすい説明がされていること。特にデメリットについて隠したり矮小化したりせず正直に説明がされること。これは信頼感とも関係する。

 ただし、メリットが大きいからといってそれだけで受け入れが決まるものではない。人々は相当の差がないと従来のものを選択する傾向がある。ひとつのデメリットがあるために大きなメリットも受け入れようとしない場合がある。その中には文化や宗教上の理由も含まれる。国民の判断は受け入れた結果でも変わりうる。事故を起こして大きな被害が出れば、その時点で人々に拒否感が出てくる。

4.デメリットに対する償い
 受け入れに伴い生ずるデメリットが出来るだけ軽減され、集中しないように配慮されなくてはならない。やむなく集中した場合は、そこに何らかの追加的メリットが必要である。具体的には金と物と名誉であり、補償、寄付金、交付金、優遇政策、代替品の提供、権利の付与、記念碑、感謝状など。自然環境についてはミティゲーションを行うことが必要となる。

5.メリット伸長やデメリット抑制に関して今後もさらなる改善が期待出来ること
 量産によりコストが低減したり品質が向上する、あるいは技術開発によって毒性や環境負荷が減らせる見込みがあるなど、メリット増大、デメリット抑制の見通しが得られれば受け入れの力になる。

6.休止、変更が容易であること 
(1)事故被害、危険性が限定的であること、万一の際にも被害を少なくすることが可能なこと、事故によるデメリットが長引かないこと。
(2)いつでも止められるものであること。永久ではなく期限があるもの。
(3)規模の縮小や計画変更が可能であること。 
                             (つづく)

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