日本エネルギー会議

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高稼働のつらさ

 車の自動運転技術が進歩を遂げて、既に公道で完全自動運転のテストが行われているなど、世界では自動運転の実現に向けて猛烈な開発競争が行われている。日本の自動車メーカーもメーカー同士の協力のほか、国内外のIT企業と組み、生き残りをかけた闘いとなっている。
 自動運転技術の完成を待ち望んでいる人は世の中にたくさんいるが、逆に自動運転が普及することで、仕事がなくなることを心配している人もいる。自動運転の完成度が上がれば、自動車事故がほとんどなくなると予想されている。そうなると車の修理が減り、保険を掛ける必要も少なくなる。現在、日本では運輸業界はドライバー不足に苦しんでいるが、自動運転車が普及すれば逆に職を失うドライバーが増えていくはずだ。自動車教習所も生徒が来なくなる。
 陽が当たれば影が出来るのは世の中の常だが、原発についてもそれが当てはまる。福島第一原発の事故以前から、日本の原発の稼働率は国際的に見ると10から20ポイント低く、これを先進国並にしたいというのが関係者の悲願だった。原発高稼働の条件はノートラブル運転、定期点検期間の短縮だ。達成されれば、電力会社はうれしいが、原子炉メーカーや工事会社は必ずしもうれしくない。
 工事の発注者である電力会社が儲かるということは、受注先の仕事が絞られて金が落なくなるということ。原発が順調に運転している最中、電力会社の案内係は、運転員の動きがない中央制御室を見学する人に対して、「運転員が何もしていない時、会社は一番儲かっているのです」と説明していた。
 その裏で、地元工事会社の社長は原発トラブルの知らせを聞くと、ほっとすると本音を語っていたものだ。原発が高稼働だからといってボーナスが出るのは電力会社だけ。電力会社の子会社でさえ売上が減って赤字にならないよう四苦八苦する。
 建設業は赤字が続くと免許が取り消しになるからだ。定期検査でも大規模な検査や大きな機器の交換などあれば、半年から一年は仕事がきれず、他の原発への出稼ぎの必要もなくなり、メーカーの工場も忙しくなる。地元の民宿、ホテル、飲食店、タクシーなども工事が大規模で長く続くことは歓迎だ。地元の工事会社としては、早く再稼働のための工事が実施され、その後も定期検査をしっかりやってほしいのだ。
 現在、廃炉に向かう原発が相次いで、それだけでも原子炉メーカーや工事会社は体制維持がきついのに、これが高稼働ということになれば、さらに苦しくなる。廃炉の工事に期待したいところだが、電力会社も廃炉をすれば運転員など社員が余るのでこの人たちを活用しようとする。
 また、廃炉は人が固定的で長くつづくものだから地元優先となりがちである。電力会社がメンテナンスや廃炉に直営部分を増やしてくるとさらにメーカーは苦しくなる。
 原発が高稼働すれば、地元経済に対する恩恵が増えるような仕組みを考えなくては、いつまでもこうした矛盾が解消出来ない。

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