日本エネルギー会議

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原発事故の下地は日本独特か(1)

 福島第一原発の事故の原因を掘り下げて行くと、日本人の考え方、歴史など
の地層に突き当たった。(過去のエッセイ 戦争調査会と原発事故原因の探求(1)~(8)を参照)そこで「我が国独特の思想、文化、自然条件、経済事情によって福島第一原発の事故の下地がつくられた」とする仮説を立てたが、これは他の国にも言えることではないかという疑問が生じたため、それが日本あるいは日本人独特のものかをより深く考察することにした。

(事故の下地となったこと)
・日本は幕末に鎖国を解き、文明開化と称して欧米から蒸気機関、鉱業、紡績、建築、製鉄、造船、兵器、電気、通信、医療など科学技術を貪欲に取り入れた。太平洋戦争に敗れた後は敵国であったアメリカから民主主義、民主教育、大量生産方式、石油を大量に消費する生活様式をそのまま取り込んだ。

(日本独特か否か)
日本の採った政策は、西欧文明やアメリカ文明に直面した国としては合理的なものであり、それをほぼ完全になし得たことは日本人の優秀さを表していると考えられる。江戸時代に日本はすでに社会的に成熟しており、教育もよく普及していたことでそれが可能であった。この時代までにここまで教育レベルが上がっていたことは他に例がない。戦後の急激な復興も敗戦当時の日本人のポテンシャルの高さの反映である。

(事故の下地となったこと)
・石油の時代になってからは、エネルギー資源を海外に全面依存していることに対する危機感が強く、自前のエネルギーを持つことは国の悲願であり続けている。このような背景の下、イギリスやアメリカで開発されたばかりの原発を極めて短時間の検討の末に取り入れた。東海原発、敦賀原発1号、福島第一原発、美浜原発などがそれにあたる。
 
(日本独特か否か)
エネルギーの海外依存度の大きさは先進国、途上国を見ても日本は際立っている。また、1930年代に原発を導入しようと考えた国、あるいは可能な工業力を持った国は日本以外には見当たらない。また、急いで原発導入をした裏には、日本の戦後の高度成長によって電力需要が右肩上がりであったことも影響している。一定の規模の国で、これほどまでのエネルギー資源の少なさと高度成長を遂げた国は他に例を見ない。

(事故の下地となったこと)
・日本が科学技術に接したのは150年以上も前であり、科学技術が誕生した西欧でのさまざまな社会的葛藤、試練がないままに、日本では物珍しいもの、便利なもの、利益を生み出すものとして受け入れ、科学技術の本質に対する理解が十分とは言えない。

(日本独特か否か)
このことは科学発祥の国、その子孫が移住した国以外はどの国も同じである。しかし、日本は安土桃山時代から為政者が天文学、測量、航海術、冶金などに興味を示し、知識としてまた製品として輸入に積極的であった。さらに江戸時代には経験の積み重ねと高い完成度を求める傾向が強く、職人の技術も高度になっており、理論や設計を知らないままに輸入品と同じものを作る能力は抜きん出ていたことは日本独特と言ってもよい。
                                 
(事故の下地となったこと)
・日本は周期的に大地震、大津波の被害に見舞われるが、近年の土木建築技術などの向上によって、建物や設備の耐震性を向上させている。原発では柏崎刈羽原発が被災したことを受けて重要設備の耐震性強化が行われていたが、津波に対しては危機感が不十分であった。
                                   
 (日本独特か否か)
 日本はプレート境界に近い島国で東側は大洋に面しており、地震や津波による災害の頻度の高さは他に例を見ない。津波は地震に付随することが多く、被害も沿岸部中心であった。これらの災害からは逃れられないものであるとの諦観とともに、慣れも生じるという点でも日本は独特な国である。過去の大津波の再来警告対応については、事業者と規制当局の間に日本独特の関係が見られた。

(事故の下地となったこと)
・日本人は伝統的に万一に備えてのリアルな思考が出来ない。また、一事が万事と考え、小さいことの積み重ねを大切にする。この結果、手厚い安全対策をしているつもりが、コストばかり掛かり焦点の定まらない手ぬるい対策をやり続ける傾向がある。

(日本独特か否か)
日本人がリアルな思考が出来ない理由はいくつかある。島国であり、極東に位置しているため、外国によって蹂躙された歴史がほとんどないこと。大きな自然災害を繰り返し経験したために、それは受け入れるしかないと考えていること。なによりも組織内での和を優先して個人の意見を自ら抑制し、美意識を最高のものとして命すら惜しまない精神性は日本人特有のものである。また、全体より細部にこだわり、結果よりも日常の努力そのものを評価したがることも独特である。
                             (つづく)

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