日本エネルギー会議

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つじつま合わせの結果

 今月はじめ、財務省から決裁文書改ざん問題についての報告書と関係者の処分が発表された。前代未聞の改ざんで国会を欺き、行政への信頼を失墜させた責任は重く、処分も軽すぎる。麻生財務大臣は自身の辞任も否定した。「馬の耳に念仏、カエルの面に小便」という言い方があるが、麻生大臣の顔がカエルに見えた。麻生大臣は国会での総理発言が改ざんのきっかけになったことを否定したが改ざんを始めたかのきっかけについては「それが分かれば苦労はない」だった。
 改ざんのきっかけは、誰が考えても昨年1月の安倍総理の国会での「私や妻が関係していたら、総理大臣も議員も辞める」という発言だろう。佐川氏も本人の国会答弁とつじつまを合わせるためにと述べている。何と何のつじつまなのか。昭恵夫人が決済文書に頻繁に登場してくることと、総理の例の答弁とのつじつまに決まっている。「つじつまを合わせようと無理をするとこういうことになりますよ」と教科書に載せてもよいような事例だ。
 福島第一原発の事故もつじつま合わせで失敗した。東京電力など原発を運営していた電力会社は外部への対応で、原発の安全性に関して「これ以上はやりようがないほど何重にも対策を取っている」と、あまりにも安全を強調しすぎていた。反対派の批判に対しては、きっぱりと安全だと言い切る。地元に対しては心配をさせないようにするのが一番の対応と考えていたふしがある。地元の自治体の首長や議会は、外国で事故が場合に電力会社から「当地の原発は大丈夫」という一言を貰いたがった。この傾向は、反対派が原発の設置や運転の許認可に関して裁判を起こすようになるとさらに強くなった。
 事故の起きた2011年当時、東京電力は福島第一原発でプルサーマルの実施のための県知事の了解を取り付けるために必死であった。ようやく地元双葉郡の町村がまとまって東京電力に不信感を持ちつつあった知事を説得しにかかったばかりであった。そんな微妙な時期に「大津波の恐れがわかったので、対策をしたい」とは言い出せない。もし、言ったとすれば即座に対策の実施を要求され、プルサーマルどころか運転継続も怪しくなるのは明らかだった。いままで「福島第一原発は古い炉だけれど安全だ」と言い続けてきたこととつじつまが合わなくなる。東京電力はいまさらまだ安全対策が不十分だと言えない状況に自らを追い込んでいた。 
 このパターンは財務省の決済文書改ざんにそっくりだ。東京電力ほどの企業であれば、資金的にも技術的にもとりあえずの安全対策は出来たはず。なんとか早急にプルサーマルを実現して、いままでの核燃料サイクルの話とつじつまを合わせたかったに違いない。
 事故後、東京電力の経営判断ミス、国をも虜にした安全文化の劣化はさんざん語られてきたが、言葉だけの安全にこだわり、ゼロリスクを要求した地元自治体や反対派の態度にも光が当てられるべきだ。これから地元は電力会社に「改善、改良」を促す姿勢が大切だと心得る必要がある。過去に国や電力会社の言ったこと、現状に囚われるべきではなく、むしろ電力会社から長期間、改善改良の申し出がないことを問題にするべきだ。そのために双方によるレビューを定期的にすると最初から決めておくのも方法だ。原発の安全にとって「つじつま合わせ」は百害有って一利なしだ。

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