日本エネルギー会議

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福島の復興を考える(1)

 福島県内で若者の集団を見かけるのは駅周辺と高校、大学など学校周辺のみになっている。若者が減る原因は出生率が低いままであることと東京など他県への流出が止まらないことだ。小中学校の統合、廃校が進んでいるため、いずれ県内の高校、大学にもその影響が現れる。原発事故の影響で避難による急激な人口減少になった浜通りの自治体では、避難指示解除後も子供のいる世帯が戻らず、先生と生徒の数が同じ小中学校が国と県の支援で運営されている。
 大学などを作って他県から若者を集めれば若者は増える。愛媛県や今治市が加計学園獣医学部新設に邁進したのもそのためだ。福島県の隣の栃木県にも先例がある。それが大田原市の国際医療福祉大学で、医療福祉専門職の養成をめざし「日本初の医療福祉を専門とする総合大学」として、1995年に開学した。大田原市に関係の深い大物政治家W氏が誘致に関与したと言われている。
 先日オープンキャンパスが開かれていたので行ってみると、大田原市(人口約7万人)の中心部から車で10分の場所にあり、周囲は見渡す限りの畑。遥か遠くに茨城県境の山が見える。キャンパスは東京ドーム約5.5個分の緑豊かな広大な敷地で、研究設備を備えた15棟の校舎と付属施設がある。キャンパス内に6つの医療福祉施設を併設しており、高齢者や障害を持つ人々と日常的に触れ合える環境になっているのが特徴だ。東北新幹線那須塩原駅に近い別の敷地には大学病院もあるから、大田原市の人々にとってはありがたい存在だ。
 大田原キャンパスだけで学生4000人、教員は180人いる。毎年900人が入学してくるが、沖縄からも含めて全国から応募してくる。人気の秘密は、就職率が毎年100パーセントであることと、授業料が全国で最も安いレベルなのだ。福島県からも学生が応募してくる。その中には避難で会津地方の高校に進学した者もいる。
 学生やスタッフはほとんどが大田原市の中心部のマンションやアパートに暮らしているため、市内は多くの若者を見かける。量販店など若者向けの店舗も多い。国道から一本入った路地の飲み屋街は「親不孝通り」と言うらしい。近年はアジアからの留学生が多くなり、2015年には大田原キャンパスに留学生別科を開設しており、時代の流れにも乗っている。
 一方、福島県では会津大学が世界大学ランキングで東大より上に入って注目を浴びている。会津大学は1993年に日本では珍しくITに特化して作られた公立大学で、英語で授業を行い論文も英語で書かせている。これは全世界から教員を募集したためで、現在でも外国人教員の割合は40パーセントだ。大学の特徴として、コンピュータ理工学専門教育、グローバル・多文化環境、ベンチャー・起業家精神を掲げている。日本の大学では珍しく入りにくく卒業しにくい大学になっている。留年、退学も多いようだ。キャンパスは国際医療福祉大学より少し狭いだけだが、学生数は約1000人と少ない。県外からの学生は40パーセントで県外から若者を集めるのに成功しており、地元の高校生にとっては難関校になっている。留学生も多く、彼等を対象とした「会津大学先進ICTグローバルプログラム」がある。
 福島の復興のためには、会津大学を拡充するか、世界に類例がない新たなコンセプトに基づいて国内外の若者を対象とした特色のある教育機関をつくることが望まれる。福島県の風土と伝統から世界が注目するコンテンツを探し、それと最先端テクノロジーであるAIやロボット工学、バイオテクノロジーを組み合わせて発展させることを研究し、これからの世の中に必要とされる人材を輩出していくことが期待される。
 福島には漆器、焼き物、織物などの伝統工芸、日本酒、果物、農作物など世界的に評価を高めつつある品々を作り出す技術がある。従来のものづくり大学とは異なり、新たな「人間でしか出来ないこと」のコンセプトに焦点を当てた大学、研究施設を設立し、世界中から若手の教授陣や意欲のある若者を集めるとよい。
 国も県も少子化対策は待ったなしだが、今からやっても20年後でなくては結果が得られない。それも対策がうまく行っての話である。失われつつあるとはいえ日本には世界の若者の興味を惹くものが溢れている。日本と福島を活性化させ、日本文化を継承発展させるためには、海外から若者を呼び込むしかない。

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