日本エネルギー会議

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水素社会への道筋(1)

 
 国は水素製造・貯蔵・輸送のインフラ整備を目指して、福島県で再生可能エネルギーから水素を製造し、それを東京オリンピックの会場で選手の送迎バスで使う計画を進めている。その先には日本の水素関連産業の世界市場への進出を見据えている。  
 水素を燃料とした燃料電池車はトヨタが開発の先頭に立っているが、いまひとつ拡大しない。車の価格の高いことと街中での水素スタンドがガソリンスタンドの5倍も建設費がかかることもネックになっている。車は量産効果が出るまでの台数になる必要があるが、今のところ採用は官公庁やデモ用にとどまっている。問題は水素チェーンともいうべき水素を安く安定的に供給する体制が確立していないことで、携帯電話に続いて日本はガラパコゴスになりかねない。 
 一方、再生可能エネルギーの開発においても課題が明確になりつつある。カリフォルニアでは太陽光発電が多くなりすぎ、電力価格の低下、出力の不安定、需給調整の問題などが発生していると伝えられているが、日本でも九州、四国で既に電力需要の8割を太陽光発電など再生可能エネルギーが占める時間帯が発生している。
 これに対して電力会社は火力発電をぎりぎりまで絞り、揚水式ダムに昼間水をあげるなど今までになかった運用をしてしのいでいる。各地方では太陽光発電の系統接続停止が現実問題となり、いよいよ太陽光発電が多すぎる事態を迎えようとしている。
 ところが最近、再生可能エネルギーによる水素製造と再生可能エネルギーによる余剰電力の問題を解決するための条件が整い始めた。余った電力を貯蔵するには、従来、蓄電池を設置することが考えられていたが、大容量のものでもそれほどは貯蔵出来ない。圧縮空気によるエネルギー貯蔵、大きなフライホイールで回転運動によるエネルギー貯蔵などが研究されてきたが、それより早く、水を電気分解して水素を製造し貯蔵する装置が実用化しそうだ。
 日立造船が国のプロジェクトとして水素製造装置の開発をしてきたが、このたびメガワット級(200Nm3/毎時)の大型固体高分子型水素発生装置を完成し、来年には市場に出荷する予定だ。急激な電力負荷変動に追従する特徴も備えている。量産されれば装置の価格も下がる見込みだ。
 一時避難区域になっていた福島県浪江町では世界最大1万キロワットの水素製造プラントの建設が始まっている。敷地は東北電力が小高浪江原発を建設するために所有していたところ。東北電力が福島第一原発の事故後に計画を取りやめ県に無償譲渡した。貯蔵はタンクか水素吸蔵合金による。
 水素を貯蔵し、タンクローリーで運搬する技術は日本のメーカーにより既に実用化されており、地方での太陽光発電の余剰電力の活用方法として実現性が高い。送電線がなくても道路さえあればどこにでもエネルギーを届けられる強みがある。太陽光発電の場合、系統接続できなかった余剰分であるから発電単価は格安なため、その分、需要側の支払う水素の価格も抑えられる。
 路線バスや物流拠点のフォークリフトなど一定の区域で使うことで水素ステーションの稼働率は確保され、このステーションで一般の燃料電池車にも水素を供給出来れば、都会での燃料電池車の普及と限界に来ている地方での太陽光発電の拡大に資すると考えられる。ただし、水素社会の落とし穴も必ずあるはずなので、これには慎重を期すべき。大切なプロジェクトほど慎重になるべきなのは、原子力開発で経験済みだ。
 経済産業省は新しいエネルギー基本計画を作ったが、重要な電源と位置づけた原発にも再生可能エネルギーにも具体的展開を語らず、このままでは日本がこれから先、エネルギー問題で窮地に陥る可能性が高まっている。原発の問題は時間がかかりそうだが、再生可能エネルギーについてはその短所をカバーする動きが活発であるため、そこが突破口になるかもしれない。

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