日本エネルギー会議

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福島復興を考える(3)

 福島の復興を考えるうえで大切なことは、福島の魅力は何かをしっかりと把握することだ。福島は日本の中心である首都圏から程よい距離にある。白河市が古くから東北の入口とよばれてきたように、東北の最南端に位置するのが福島だ。それは福島が厳しい気候というイメーシのある東北地方でも最も穏やかな気候に恵まれていることを意味する。浜通りの広野町のキャッチフレーズが「東北に春を告げる町」なのだ。
 太平洋に面するいわき市、原発のあった双葉郡、相馬を中心とするいわゆる「浜通り」地域は、海洋性の気候で明るく暖かく雪も積もらない。東電社員は東京の本店から福島原発に転勤すると「ここは東北の湘南」などと言っていた。海産物も豊富だ。私が現役引退後に双葉郡富岡町に家を造ったのもそうした環境を好んだからだ。 
 東北自動車道に沿った県の中央にあたる「中通り」地域は、高村光太郎が智恵子抄で「智恵子は東京には空がないという。阿多多羅山の山の上に毎日出ている青い空が、智恵子のほんとうの空だという」と詠んだように、実にのんびりとした穏やかそのもの。山奥の「会津」地域は、冬は深い雪に閉ざされる盆地でひとつの山の文化圏を作っている。会津藩の影響で武士道精神も色濃く残っている独特の風土だ。よそから来た人に対して厳しい反面、その人を地域に取り込む不思議な包容力がある。
 福島は自然も適度なスケールで厳しさより暖かさを感じさせる。安達太良山のロープウェイで一緒になった神戸から観光で来た年配の女性二人組は「何回も来ています。関西より景色が雄大で綺麗。気持ちがよい」と話していた。雄大と言っても北海道のような果てしない雄大さで退屈になるようなことはない。猪苗代湖も大きいが琵琶湖のようなことはない。山もせいぜい2000メートルで、アルプスのような3000メートル級はない。
 外国から帰国する際、ジェット機で成田上空に来ると、日本がなんと良いところだと毎回思えるように、福島は心穏やかにのんびりした気持ちになれる魅力を持っている。もっとインパクトのある景色は全国の観光地でいくらでもある。しかし、田舎暮らしを満喫することでは、福島はかなり上位に位置する。観光にしても忙しく移動するのではなく、長期滞在型に向いている。福島では県内の原発がすべて廃炉になったことも大きい。
 今は福島県だけでなく多くの地方から首都圏に若者が出て行くが、いずれ大都会に疲れ、あるいは事業に成功し暮らしがどうあるべきかを考える時がくる。あるいは、首都圏で大震災が起こり、地方に人が逃れてくる可能性もある。これを見越して先に移住してくる気の早い人もいるはずだ。これから日本人も外国人もこのような福島の凡庸なおだやかさの魅力を発見して、引き寄せられるはずであり、そうなれば福島の将来は明るい。今は突拍子もない施設づくりや近視眼的施策を焦ってやることは控えねばならない。

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