日本エネルギー会議

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原発の安全に対する地元の責任と役割(2)

(東京電力と地元自治体と関係)
 原発に関する規制は原子炉等規制法をはじめとして国が一手に握っており、原発建設時の土地の開発利用に関する規制以外に自治体には権限はない。運転開始後の原発敷地内のことについては県市町村の権限は及ばない。
 東京電力と地元自治体との安全協定が締結されているが、それは紳士協定であり強制力はない。地元各自治体は住民の安全を確保するための体制として原子力対策課など専門の部署を設けており、地方議会には原子力特別委員会がある。福島県内で原発を運営する電力会社は東京電力のみであり、福井県のように3つの事業者(関西電力、日本原電、原子力研究開発機構)で比較したり、競わせたりすることは出来ない。
 安全協定が法的裏付けのない紳士協定であることは東京電力にとって有利だとは言えない。紳士協定だからといって東京電力が一方的に自治体の要求や要望を拒否出来るかと言えばそうではないのだ。紳士協定であるがゆえに、グレーの部分や無限の部分が出てくる。
 自治体の要求や要望に東京電力がどの程度応じるかは両者の力関係による。立地にあたって原発が安全であることを前提としているので、事故やトラブルあるいは不祥事などを機に、東京電力は自治体側に譲歩せざるを得なくなる。また、日頃、原発の運営に協力的態度をしてくれる首長や議員の顔を立てる必要があり、そうしなければ反対派の議員や住民を抑えてくれる人がいなくなる。年月とともにこのようなケースが積み重なってくるので、東京電力は運営が窮屈になる一方だった。
 福島第一原発の事故以降、全国各地で安全協定を結ぶ自治体の範囲が広がる傾向が見られる。また、協定の内容も多岐にわたるようになった。住民の安全にとってはよいことのように思われるが、必ずしもそうとは言えない。複雑化することで、電力会社の負担が大きくなる。大事な安全対策にまわるべき労力と予算が別のところに回ってしまう。少しでも低くしたいコストにも悪影響を与え、原発の競争力を奪い、ついには原発を廃炉に向かわせることになるからだ。
 本来、電力会社は規制基準で定まっていることを最低ラインとして、自主的に安全性の積み増しをするべきなのであるが、安全協定に基づく地元の要求要望が予想されるので、なるべく降り代を取っておこうとする傾向がある。
 自治体側の要求、要望に関しても問題がある。先に述べたように自治体側の情報量、情報の質は限界があること、首長や議員は住民の目を意識して内容や達成可能性ではなく、出来るだけ見栄えのよい対策を要求する。電力会社にしても原発を再稼働出来なければ大きな経営問題となるため、いつまでも抵抗をするわけにいかず、後々困ると思っても要求を受け入れがちだ。

 次回は最も重要な自治体の財源に関する問題を取り上げる。  (つづく)

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