日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

廃炉、四つの不安要素

 福島第一原発の廃炉工事が始まって7年が経つ。工程、費用が何回か見直されたが、今後の展望はまだ開けてない。一昨年の暮れには廃炉費用が当初見込みの4倍の8兆円に膨らみそうだと試算が示されているが、タイやニュージーランドの国家予算並の数字だ。
 廃炉には大きく分けて四つの不安要素があり、それぞれお互いに関連がある。まずは人手不足。我が国の労働人口の減少は顕著で、また対策を講じてもすぐには成果が現れない。エンジニアから現場作業員までどの部分を取ってみても厳しい状況が見えてくる。省力化や外国人の支援を考えても強い放射線下労働であることがネックだ。特に専門技術者は簡単に機械に置き換えることはできない。また、省力化、機械化は困難な技術開発課題でもあるとともに費用増加に繋がる。
 次は技術開発の問題。今取り組んでいる燃料プールからの燃料の取り出しはなんとかなりそうだが、困難が予想されるのが1~3号機の溶け落ちた燃料デブリの取り出しと保管、処分をどうするかだ。これらはロボットや遠隔操作に依存するところが大きいが、技術開発には時間と費用がどの程度かかるか予測がつかない。不測の事態に備えて約2千億円を別途積み立てるようだが、それで済む保証はどこにもない。
 三番目は資金調達の問題。東京電力が今後30~40年にわたって廃炉費用を積み立て、毎年必要な額を取り崩して廃炉作業に充てる仕組みを作ったが、その負担は電気料金や東京電力のあらたな事業による収益をあてにしており、確実性はない。東京電力が電力自由化の下にそれだけの稼ぎが可能なのか。それがうまく行かず負担を他の産業や消費者に押し付けることを国が強制するようになれば、その仕組みは国民の支持を得るのが難しくなることが予想される。
 四番目は廃炉に伴って出る燃料デブリなど放射性廃棄物の処分場問題だ。すでに青森県に存在する高レベル放射性廃棄物でさえ、処分場が探せずにいる。福島県が一番警戒しているのは取り出した燃料デブリなどをいつまでも第一原発構内に置かれることだ。汚染水の問題が片付いたとしても、燃料デブリやその他の高レベル放射性廃棄物の処分は比較にならないほど困難な問題だ。処分場のあてもない燃料デブリの取り出しを福島県は認めないだろう。
 福島県は既に除染に伴う放射性廃棄物の中間貯蔵施設を第一原発周辺に受け入れている。燃料デブリに比べれば遥かに放射能が少ないこれらの廃棄物も、搬入を始めた平成27年3月から30年以内に県外へ搬出して最終処分すると約束している。
 今までもそうであったが、これからも当面我が国の経済力は、人口減少にあわせて低下し続ける。高齢化により財政負担が支えきれなくなれば、増税に踏み切ることになり、電気料金に廃炉費用を上乗せすることや税金を廃炉に投入することに賛成が得られなくなることが予想される。将来ある時点で解体工事や燃料デブリの取り出しを中止して石棺方式にすべきだとの意見が出てくる場合も想定しておく必要がある。8兆円かかろうが、40年かかろうが「廃炉工事をやり遂げるのが国と東京電力の責任」は、福島県民が一歩たりとも譲れないところだ。
 到底実現しそうもないことを、約束して当座をしのごうとする政治判断は、これまでも繰り返されてきたし、いまだに行われている。このようなやり方を「政治的決断」と言い続けるなら、福島県民の望む廃炉は永久に出来ない。やるべきことは、高レベル放射性廃棄物に対する一般国民の考え方を情緒的理想主義から科学的現実主義に転換させることだ。30年後までにすべての国民に考え方を変えてもらうことが福島第一原発の廃炉を滞なく終わらせる最も合理的かつ有効な手段だ。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter