日本エネルギー会議

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原発の安全に対する地元の責任と役割(3)

(東京電力と地元自治体と関係)
 東京電力と地元自治体の関係では、自治体の財源に占める原発関連の税や寄付金が最も大きく重要だ。一般の工場誘致がむずかしい僻地に原発が立地したことで雇用が生まれ、県も周辺の市町村も税收で潤った。
 固定資産税、事業税、法人住民税、さらには電源三法交付金(正式名称は電源立地地域対策交付金)も建設準備段階から入ってきた。核燃料税も創設され、これも自治体の安定財源となった。この結果、県内で財政力指数が1に近いか、1を超している市町村(国からの地方交付税をもらっていない)が原発のある浜通りにいくつも出現した。
 指数1以上は企業が密集している東京、全国クラスの有力な工場などがある都市にしかない。電源三法交付金には出力比部分があるため、原発が順調に運転するほど交付金が多く出る仕組みになっている。この制度は地元自治体に対するあからさまな協力、支援の見返りとなっている。
 また、東京電力は自治体や地元の団体に対して巨額の寄付金も行ってきた。寄付の名目は、地元企業としての地域振興、文化振興への協力であるが、実は日頃の原発支援に対する感謝であり、今後ともよろしくとの意図がある。金銭が東京電力と地元自治体をより強く結びつけていることは明らかで、「金銭は金銭。住民を守るための原発に対する厳しいチェックは別もの」は建前に近い。
 自治体や関係する団体は毎年事業計画を立てるが、いままでの事業を打ち切ることはよほどの問題がない限り困難であり、収入が変わらなければ新たな事業枠は限られてくる。首長や団体役員にとって政治家として実績を残し、自分たちの地位を安泰にするために必要なのは、従来の事業を継続し出来ることなら拡大させることだ。
 具体的には住民が喜ぶような新たな事業や地元企業(地方では土建業が中心)に発注してやれる事業を打ち出すことで、そのためには新たな税収や交付金、大口寄付を必要とする。これが地元自治体で繰り返えされていくので「電源三法交付金や寄付金は麻薬のようなもの」と言われる。
 自治体や団体は原発の安定的な運転を望むが、心の中は複雑だ。事故が起きて東京電力が批判に晒されることは彼らにとって三重の意味があるからだ。
 一つは電源三法交付金の出力割で交付金が減額となること、世間の目を意識して寄付金が出なくなる可能性があること。
 二つ目はこれを機に新たな課税や寄付金の要求あるいは約束事を追加する理由になるということ。
 三つ目は原発支持支援をしてきた自分たちの立場が危うくなることだ。事故現場の視察にヘルメットを被って地元メディアを同行させて入る首長は、終始一貫して安全を厳しく追求するだけでなく、場面場面で役割を使い分ける多重人格にならざるを得ない。
 大事故が起きた福島県では政治家は誰も東京電力を擁護することはしなくなった。一貫して原発を支持し、再稼働を主張している自民党に所属する議員でさえ、擁護する発言はしない。地元自治体に対して東京電力は全面降伏の状況が続いて、自治体の首長などは東京電力の原発再稼働を側面援護する必要がなくなっている。
 ただし、今後は廃炉に伴う地元の有形無形の負担について、東京電力は地元自治体に苦渋の決断と住民への説得を含む協力支援を要請する場面が続く。既に廃炉に関する安全協定が結ばれており、東京電力と地元自治体の経済的関係が再構築されつつある。廃炉に関する情報は当初からかなり開示が進んでおり、この点では進歩が見られる。          (つづく)

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