日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

原発の安全に対する地元の責任と役割(4)

(東京電力と地元自治体と関係 つづき)
 東京電力と地元自治体の関係では、自治体の役割である雇用促進も重要だ。一般の工場誘致がむずかしい僻地に原発が立地したことで原発を中心に雇用が生まれたことは、自治体にとってありがたいことだった。原発は一般的な工場誘致に比べると雇用者数が少ないと言われるが、それほど少ないわけではなく運転とメンテナンスだけでも1基数百人は必要。雇用条件の良さと安定感は抜群だ。東京電力の社員は都会から来るが社宅や寮に入り、地域で暮らしてくれ、消費もし住民税もたくさん収めてくれた。
 東京電力や子会社は地元の高校、特に工業高校の卒業生の憧れ就職先になった。月日が経つにつれて各地から来ていた社員が地元の女性と結婚して社宅に入り、後に地元に家を作り子育てする。親が定年になる前にその子供が原発関連の企業に就職するといったように世代交代して続いていく。労働組合の力があって福利厚生が最高水準で充実しているのも特徴だ。そのための施設がつくられ地元からの雇用も生まれた。
 原発関係のメーカーや下請企業においても似たようなことが起きる。これは一般の工場より原発が長く安定したものであるからだ。建設時は特に人数が多くなるが、それが終わっても、施設の維持管理や定期検査工事などがあり、福島第一原発、第二原発では常に数千人から1万人の雇用があった。
 東京電力や子会社は県庁や町役場の他に警察、消防署、関係団体のOBを積極的に再雇用した。専門性を持つ人は特に優遇され、定年後の雇用は次第に指定席化した。こうした職場における先輩後輩の関係は独特のものがある。東京電力にとってはOBを通しての行政側の情報獲得や裏交渉、意向の打診の役割を期待出来た。住民が原発関連の雇用に介入することは、地元の政治家にとって二重のメリットがあった。一つは紹介された人は支持者になってくれたことであり、もう一つは選挙時に東京電力や原発関連企業からの支援を期待出来た。東京電力にとっても地元の政治家や経済団体の有力者がその支持者とともに原発の運営に協力してくれることは心強いものであった。
 原発で働く地元の人々が増えることは、現場の情報や東京電力の内部情報が地元に流出する可能性を大きくするが、逆に地元の力で外部に情報がもれないようにする働きもある。深い関係であればあるほど、何があっても原発を守ろうとする雰囲気になり、内部告発もしにくく異分子はすぐ見つけられて排除される。県内外から反対派がくれば地元が防波堤になる。メディアが取材に来ても東京電力寄りの対応もしてくれる。
 地元自治体は監視する立場からいつのまにか擁護支援する立場になっていった。こうして、雇用を通じて東京電力との関係が濃密になったことにより、原発の安全に対する地元の責任と役割は果たせなくなってしまった。(つづく)

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter