日本エネルギー会議

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すでに虚構か(2)

 福島第一原発の事故は原発事業全体を見直す絶好の機会であったが、事故に起因する負担を国民や消費者につけかえる仕組みがつくられただけで、原発事業全体の虚構を明らかにすることはなかった。逆に原子力規制委員会の設置、安倍首相の言うところの世界一厳しい新規制基準によって、ますます事態は悪化した。
事故後、関西電力は美浜1、2号機の廃炉を決定し、その理由について「安全対策工事に5年程度かかり工事費もかさむ。原子炉等規制法上、20年間の運転延長が認められたとしても、残り15年間で採算を取るのは難しい」と説明。出力80万キロワット以上の高浜1、2号機と美浜3号機については、運転延長を申請した。大飯1、2号機もこれに習うものと思われる。しかし、工事費が上振れしたり、審査手続きが長引くなど目論見通りに行かないことも大いに考えられる。

 資本主義の本場であるアメリカでは、稼働率90%の実績があっても採算が取れないとの判断で廃炉や建設計画の中止が起きている。これは原発の経済性はないと言っているのも同然だ。ヨーロッパでも新規の原発は軒並み採算が合わないと撤退の方向になっている。再生可能エネルギーの発電コストの低下と原発の発電コストの上昇は、将来ますます原発がコスト的に不利になることを示唆している。日本では再生可能エネルギーのコストがなかなか下がらずにいるが、グローバル経済の下ではいずれ日本でも下がってくるはずだ。

 日本の原発が低稼働率でも存続出来たのは、かかった費用を料金ですべて回収出来ていたからだ。だからといって、日本が経済性のない原発をすべて投げ出してもよいということにはならない。日本の場合は賢く慎重に電源の重点を移していく方法を考えるべきだ。なぜなら、電力は国民の生活を支える基本中の基本。つい先ごろの集中豪雨による短時間の停電でも再点灯した瞬間、人々は「これほどありがたいものはない」とテレビで取材に答えている。ブラックアウトした北海道ではもっと切実な声が上がっている。今や電化が進み、大切な情報も電気があるからこそ伝わってくる。自動車までもが電動化しようとしている。現代は過去のどの時代より電力の安定供給が国民の生死にかかわっている時代だ。
電源の選択において最優先すべきは、年365日24時間、電力供給を絶やさないことである。しかも、それを地域独占、総括原価方式ではなく地域を超えた競争と電力自由化の下にやる。ここから検討を開始することがなによりも大事ことであり、電力料金、国際収支、環境問題、地域の受け入れ、廃棄物、地域の雇用など他の条件に優先して供給保障があるべきなのだ。場合によっては電力自由化の後戻りも覚悟するべきだ。こうしたことは、電力自由化に踏み切る前に、しっかり検討しておくべきことだったが、国は欧米に早く追いつこうと焦って省かれてしまった感がある。  (つづく)

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