日本エネルギー会議

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福島の復興を考える(12)

(報道映像と現実の差)  
 景色にせよ料理にせよ、テレビや写真が映すものは何でも綺麗で美味しそうに見えるが、実際に行ってみるとがっかりすることがほとんど。レンズフィルターなどを使うのだろうか、綺麗に見せる映像技術は進み、現実との落差が拡大するばかりだ。

 民放テレビの夕方のニュース番組を見ていると最後に「きぼう」というコーナーがあり、今年県内で生まれた赤ちゃんが両親とともに紹介される。福島県では震災と原発事故の後、一時期落ち込んだ出生率が回復し全国平均を若干上回っている。可愛い赤ちゃんの顔と幸せそうな両親を見ると、タイトル通り希望を感じ、視聴者を元気づけ明るい気持ちにさせることに成功している。しかし、現実には県内では生まれる人数の2倍の死亡者がいるため、1ヶ月間に700人のマイナス、さらに県外流出200人で約900人がいなくなっている。(今年7月の数字)、人口は確実に減少しているが、このことはあえて触れられない。
 
 被災地の農業についても、取り上げられるのは帰還して農業再生に取り組む姿ばかりだ。最近、富岡町の産業振興課が町内の農地所有者の意向を調査したところでは、「貸したい」が25%、「集約に協力したい」13%、「売りたい」12%、「転用したい」8%、未定やその他が41%となっていて、耕作したいはわずか1%と危機的状況が見えてくる。農家の高齢化と避難により移住したため、ただでさえ少ない後継者がほとんどいなくなり、除染のために表土を剥ぎ取られ、雑草に覆われ農地として再開するには最初からやり直さねばならないからだ。既に一年半前に、町内の三分の二が除染終了し帰還が可能になっているが、事態はよくなる兆しがない。毎月富岡町を訪れるたびに増えているのは、農地だったところにつくられた廃棄物の仮置き場とソーラー発電施設だ。

 明るい映像がいけないと言っているわけではない。バランスのとれた内容にしないと、ほとんどの情報をテレビや新聞から得ている県民が、避難区域の本当の姿を知らないまま、なんとなく復興が順調に進んでいると思い込んでしまう。明るい面を強調するのは報道機関だけではない。県や市町村の広報誌も同じ傾向を持っている。

 福島県が復興を成し遂げるかは、県民の覚悟にかかっている。実態をあますところなく伝え、現実認識をしっかりして問題意識を持ってもらう必要がある。映像や写真のイメージだけでなく、統計資料をグラフや表で見せるなど、数量的に捉えたもの、全体像がわかるものを併せて提供することが求められている。そうでないと、将来グルメや旅番組のように情報が信用されなくなる。

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