日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

すでに虚構か(5)

今回は現時点で利用可能な電源のミックスについて「当面どうすべきか」について。当面とは今後10年程度を想定している。「方針」は
・これからの電源の選択肢を狭めないためと、大きな自然災害やテロの緊急時に備え、既存のあらゆる設備は維持する。
・先に掲げた7項目などを念頭に、停電リスクを重視して電源別の発電量を決め、それを毎年見直す。
・環境を重視した電源の運用を行う。
・省エネ、電力貯蔵をひとつの新たな電源と考える。
・送電網について各地域が支え合うネットワーク化を図る。
・大停電が起きた場合の損害額を計算し、リスク回避に使う費用がどの程度まで容認されるかを明らかにする。
・方針と具体策について国民の合意形成を図る。そのため、需要予測、火力、原発、核燃サイクル、再生可能エネルギー、蓄電池などについて、基礎になる数字やファクトを可能な限り固め、政策議論の出来る状態にする。

「方針に基づく具体的展開」は、
(既設の電源の維持)
・石炭火力と石油火力を天然ガス火力にシフトしていくが、設備は廃止せず、停止したまま災害など非常時に備えて短期間で再開出来るよう一定量の燃料貯蔵と設備の維持管理を続ける。
 原発は小出力であっても既に廃止措置に移行したもの以外は廃止に着手せず維持する。これらの費用は電力料金に上乗せする。

(環境を重視した電源の運用)
・二酸化炭素排出量を抑制するため、原発と再生可能エネルギーを優先して動かす。火力発電による調整を最小限にするため揚水式水力発電を改良したり、運用についてAIを導入するなど最大限活用する。
 石油火力および旧式の石炭火力は設備の維持はするが非常時以外は運転しない。
・太陽光発電や風力発電の事業者に稼働停止を求める出力制御を少なくするため、他地域への送電あるいは蓄電、自家消費にまわす努力をする。
・揚水式水力発電所の建設と既設水力発電所の一部を揚水式に改造をし、全国各地で電力貯蔵出来る容量を引き上げ、再生可能エネルギーの余剰をより多く吸収出来るようにする。
・再生可能エネルギーのなかで資源量が豊富で出力安定性のある地熱発電を推進する。特に温泉に影響の少ない密閉式水循環方式の大型化(出力数万キロワット)を推進する。
・再生可能エネルギーについて環境破壊にならないよう規制を強化する。

(原発の運用の工夫)
・原発は規制基準適合を図り、可能なものは運転期間延長をする。ただし、実際に運転するものは経済性のあるものに絞り込んで、使用済み燃料の発生量を抑制することで次世代の負担を軽減する。
・運転しない小型の原発は燃料棒を炉から取り出すが、災害など非常時に備えて運転再開が容易な状態に維持しておく。そのための費用は電気料金に上乗せする。
・旧式の火力や小型の原発は再生可能エネルギーと電力貯蔵、系統充実の状況を評価し、それに見合った分だけ廃止措置を実行に移す。
・使用済み燃料の再処理量は、プルサーマルで消費出来た実績に見合ったものとする。核燃料再処理工場の完成後も、発生する各原発の使用済み燃料は原則として工場に持ち込まず各原発構内で乾式貯蔵する。 
・現在ある原発に限り、コスト高であっても安全保障のために残して運転するかスタンバイさせて、そのためにかかる費用は電気料金に上乗せするか国が負担する。

(省エネ、電力貯蔵という新たな電源)
・公共施設や学校の照明の全面LED化など、国や自治体は達成目標を決めるなど最大限省エネを実行する。
・民間の省エネ投資に対する減税措置を強化する。
・新規のメガソーラーは自家消費の設備以外はすべて蓄電池併設を系統接続の条件にする。現時点では蓄電池のコストが高く採算が取れないため、蓄電池の価格が下がるまでは、半額程度の補助金を出す。
 現在、ソーラーが発電しない朝夕のピークを揚水式水力発電と火力発電の焚き増しているが、ソーラーへの蓄電池併設により負担が軽減される。
・全国の水力発電所を揚水式水力発電所に切り替えられないか検討する。また既設の揚水式水力発電所のポンプを急いで全機可変速化する。

(各地域が支え合うネットワークの充実)
・太陽光発電設備を所有している家庭、企業に対して蓄電池設置をする場合に補助金を出し、朝夕の需要ピークを平坦化することで火力発電所や揚水式水力発電の負担を軽減する。
 また、揚水式水力発電所の需要ピーク平坦化の貢献に対する利益を電力会社に与える仕組みをつくる。
・分散型電源をネット化して、災害あるいは突発的な事故に強い電力供給体制に持っていく。各地域単位で電力の自給自足率を増やすことで、少なくとも地方では大電源へ依存しないで済むようにする。
・地域間の電力融通規模を拡大するための新たな送電線建設、周波数変換装置の建設を前倒しする。

(大停電による損害額と電源の維持費用などと比較)
・地方(大手電力会の旧供給範囲)ごとに、全停電が起きた場合の損害額を推定する。また、火力発電用天然ガスの輸入が途絶えた場合、電力供給にどの程度の影響が出るかを推定する。
 併せて各地方で考えられている大地震が発生した場合の、電力供給への支障がどの程度のものになるかを推定する。
・推定した結果と大停電を防ぐための措置にかかる費用の比較をする手法を開発し実際に運用する。

今回示した方針と具体的展開は「維持費用を電気料金に上乗せする」「新たな補助金」など国民や消費者の負担を増やすことが多く、受け入れがたく思われるかもしれないが、実は現在、電力会社が原発再稼働までの経費負担に耐え、供給力が不足した際に旧式の火力発電所を騙し騙し使っている現状に近いものである。本提案はそれらを「エネルギー安全保障」という目標を明確に打ち出して、国民や消費者の合意のもとに今行われていることをオーソライズしようとするに過ぎない。まもなく電力完全自由化を迎えるが電力会社はいまだに供給責任について従来通りに考えている。そのことに国民や消費者は甘えるべきではない。また、電力会社もそれを続ければ売上の減少と費用の増大で経営が破綻する。大停電を回避するには国民や消費者はそれなりの負担をするべきである。

次回は「将来的にどうするか」について (つづく)

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter