日本エネルギー会議

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自然への畏れ

 自然の恵みと冷酷さ。日本に限らず世界のどの地点でも古代人はそのことをよくわきまえ、自然への畏敬の念を持っていた。古代宗教の起源は自然への畏れだ。その頃、人類は自然のポテンシャルに対して人間がどのくらいの存在かをよく理解していたと思われる。中世ヨーロッパに始まった科学の発展により人類は自然の仕組みの一部を解明していく方法を手にし、自然を破壊し秩序を変えてまでも資源を手に入れ、世界各地で人口を増やし他の生物を圧迫し活動を拡大してきた。その結果、現代人は古代人にくらべて自然への畏れを抱くことが少なくなった。私もその一人である。

 2011年3月11日、私は震度6強の東日本大震災に遭遇した。その経験と驚きは続いて発生した福島第一原発の事故とは比較にならないほどの衝撃であり、70年近い人生の中でまったく特異な経験であった。突如激しい揺れが始まり、庭に飛び出したが立っていられない。いつまでも収まらない。少し弱くなったかと思うと、またさらに強い揺れになり、大きな庭石がいまにも転がらんばかりに左右に揺れ動いた。空は青く透明だったが、空気は密度が濃くなったような気がした。早く収まってくれと願っても、それは叶うものではなかった。もう降参と心の中で叫んでもどうなるものでもない。私は古代人になったかのようにひたすら恐れおののき、自然の力が、人間が作り出したどのようなエネルギーよりも巨大なものであることを思い知った。

 それから数年が経過し、今年の夏に避難先で経験した猛暑の勢いは、いつまでも止まない東日本の地震でも感じたものと同じだ。猛暑、カテゴリー4のハリケーン、都市に迫る山火事で多くの人命が失われるなど自然界の抵抗を許さない冷酷さには脅威を感じざるを得ない。先ごろフィリッピン北部に向かったスーパー台風の最大風速は95メートルと信じがたいものだ。
火山も活動期に入っているようで、世界各地で最大級の噴火が起きる。福島市の近くにある吾妻山はが、今年夏頃から火山性地震が多くなり、浄土平という有名な観光スポットに行くスカイラインが途中で立ち入り禁止のままで、見事な紅葉も見に行くことが出来ない。明治時代の磐梯山の大噴火から100年になる。地球全体で見れば、何といってもシベリアの凍土が溶けたことによるメタンガスの噴出が不気味だ。

 これからの世界で人類は火責め水責めで世界中に避難者が流浪する。食糧も水も確保出来ず、インフラが破壊され、そのために紛争が各地で起きてしまう。それに対して最新の科学技術で立ち向かおうにも、生産設備など足元を崩されて原始的な手段しか使えない。人類の英知などとうぬぼれていてはいけない。世界人口が爆発するという予測はもろくも崩れ去り人類滅亡に向かう進路が見えてくる。ミクロの世界では癌の予防や治療に大きな進歩が見られ不老不死に一歩近づいたが、地球規模の問題には手がついていない。仲違いをやめて滅亡しないための対策を科学技術の粋を集めて作ろうとしても、もう間に合わず、いままで人類が他の生物を滅亡に追い込んだように自然界が人類を滅亡の危機に追い込む筋書きが見えてくる。太平洋戦争で敗戦直前の日本が最新の兵器を作ろうにも工場が全部爆撃でやられてしまい、リヤカーやボートや竹槍しか作れなくなってしまったことからの連想である。

 現在の最大の関心事は、来年以降の気象がどのようになり、それによってどこにどのような被害がもたらされるかである。ウェザーニュースが気象庁よりはるかに多い数の観測器を全国に配備して、ピンポイントの気象情報を販売して大きな利益をあげているが、国連が主催し各国が協力して世界中の地点にウェザーニュースがやっているような高密度で観測器を配置し、データをスパコンで解析して来年以降の気象予報をつくる。対策の第一歩として各国はその予報を国民に知らせるとともに、少しでも被害を減らすことに挑戦するべきだ。

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