日本エネルギー会議

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高コスト構造の歴史

 今年初め、リニア中央新幹線の建設工事を巡り大手ゼネコン4社による談合事件が起きた。大手4社が過去に「談合決別宣言」をしたのにもかかわらず、総工費9兆円の巨額プロジェクトをめぐってまたもや談合が繰り返されたのだ。リニア中央新幹線ともなれば、規模や技術的ハードルの高さから大手ゼネコンと中堅建設会社のJVしか施工出来ない。原発業界でもおなじみの大林、鹿島、大成、清水の4社が談合により利益の確保を図ったと見られる。
 
 新幹線、リニア中央新幹線などは、発注者はJR各社以外にはない。発注者も受注者も限られた独占状態だ。その中で利益を最大にしようと談合が行われれば、利用者は割高な料金を払わねばならなくなる。電力業界でもかつて水力全盛の頃、大規模なダム工事では同じようにゼネコンと電力会社が政治家を巻き込んで疑獄事件を起こし、映画の題材にもなった。原発建設が盛んになると、談合も必要がないほど徹底した独占、寡占状態となった。原子炉は沸騰水型か加圧水型しかなく、それもアメリカのGE社かウェスティングハウス社に限られ、日本メーカーはそのライセンスを持つ日立、東芝、三菱重工の3社に限定されていた。建築工事や土木工事は大手ゼネコンが中心となったのは新幹線と同じだ。
 
 炉型が決まると製造、建設、メンテナンス、廃炉工事のメーカーが自動的に決まる。炉型が決まるまではメーカーは激しい受注競争をするが、一旦決まればそれ以降は無競争になる。ひとつの契約が出来れば、それは保修、改造、増設、廃炉まで続くことになる。大手ゼネコンの受け持つ建物や構築物についても同じだ。建屋の改造や大型の機器の取り替えで元々の発注先でないところと契約した例はほとんどない。建設したメーカーは細かな設計図面やノウハウをしっかり抱えて電力会社に他社を選択することを妨げていた。かつて川内原発を視察した際に、取り替えたタービン発電機が三菱製でなくシーメンス製だったことに驚いた経験があるくらい珍しいことだ。建設メーカーやゼネコンにとって最初の契約を取ることは100年分の契約を取ったことと同じだった。
 
 契約内容についても見積もりをチェックするのは電力会社の契約部門だけであり、工事主管部門は高額な見積もりの見返りに「完全看護」のサポートを要求した。地元対策でカネを落とすことが求められ、地元から調達する消耗品や一般的な工事なども割高な契約をする傾向が見られた。電力会社は総括原価方式によって発電にかかった経費をすべて電力料金に織り込み、あとは経済産業大臣から認可を受けさえすればよかった。さらに投資額が利益に比例する構造になっていたため、費用を抑えようとする意欲は小さかった。

 世論に押されてコストダウンの圧力が電力会社からかかると、メーカーや大手ゼネコンは一律何パーセント価格を下げるという要求さえ飲んでいた。それだけそれまでの契約による利益が大きかったこと、100年を考えれば要求を飲んだ方が得だからだ。福島第一原発の廃炉工事を見ていても相変わらず、日立、東芝、大手ゼネコンが担当している。現場では大メーカーには考えられない初歩的なミスを繰り返しているが、東京電力は発注先を変更しようという気持ちもないようだ。今後増える他社の廃炉工事もほぼ独占となる。それでは原発の発電コストは下がらない。
 

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