日本エネルギー会議

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福島の復興について考える(16)

(価値あるものは何か)
 銀座を歩いていると中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムなど観光客の増加は、「いつの間にこんなになったのだろう」と思うほど。日本人は寄り付きにくくなる一方だ。街は昔からの華やかさや高級感ではなく、彼らの買いたいもの、食べたいものなどに合わせて大きく変容している。かつてジャポニズムがヨーロッパを席巻した時代に比べて浅薄な感じが否めない。最近、テレビ番組で多くなったのが、NHK「COOL JAPAN〜発掘!かっこいいニッポン」テレビ東京「Youは何しにニッポンへ」「日本に行きたい応援団」など、外国人が日本に強い関心を持っていることをテーマにしたものだ。数の上では東南アジアに負けているが、欧米やオーストラリアからの来日者はより深い関心を日本の自然や文化に対して持っている人が多いようだ。東南アジアの人たちもリピーターとなるにしたがい、同じように日本の文化や生活様式に関心を移すはずだ。

 地方でもインバウンドを当て込んでの取り組みが盛んだが、外国人を魅了する街、食べ物、工芸品、芸能などを支えているのは、日本の文化であり歴史、それに変容しながらもいまだに受け継がれている日本人の生活習慣、気質そのものだ。そのようなものこそ日本の宝であり、魅力の源泉である。そのことを福島の復興を考える際にも忘れてはならない。福島の生活習慣や気質をなくしては、外国人はおろか日本人も福島に呼び込むことは出来ない。
 
 福島の復興といえば、すぐにインフラ復旧、新たな工場建設、漁港の整備といった具合にハード先行となるが、ソフトをどのように大切に残し、発展させるかを考える必要がある。生活習慣や気質は自然環境と歴史によって形成されてきた。だから同じ福島でも会津、中通り、浜通りと違った特色を持っているのだ。なかでも会津地方は戦国時代からの雄藩で、薩長の官軍も一番恐れた武士の心が庶民にも行き渡った場所で、外国人にも大変魅力がある土地である。中心には戊辰戦争を戦った鶴ヶ城があり、寺や神社の多くも古い歴史を刻んでいる。人々の気質も独特で、原発事故で会津に避難した大熊町を中心とした人々は積雪や夏の暑さに苦労しながらも、そのまま会津に住み続けているケースもある。いわき市での避難者に対する嫉妬といじめに対して、会津の人々の包容力がなにより嬉しかったという人もいる。
 
 震災と原発事故以降、コメ文化を継承する農家の後継がいない、核家族化が進んでおり、生活習慣や伝統を引き継ぐことが難しさを増していることも心配である。世代間での引き継ぎとともに教育の場で伝統や歴史を学ぶ機会を増やす必要がある。行政は歴史や文化こそ魅力の源泉、価値であることを認識し、伝統文化の振興、発展に今まで以上に力を入れることが求められる。外国人についても人手不足のための助っ人ではなく、福島の生活文化、気質に魅力を感じて暮らして行きたい願望を持っている人を優先して長期滞在や移住の機会を提供するべきだ。

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