日本エネルギー会議

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福島の復興を考える(15)

 新設された富岡町の「県ふたば医療センター附属病院」にはヘリポートが設置され、先週から浜通り専用の多目的医療用ヘリが常駐することになり、福島第一原発の事故以前に比べ緊急医療体制は大幅に整った。現在のところ対象となる住民は浜通りでは数千人だが費用は年間2億9千万円かかりこれを県が負担する。もっとも、福島第一原発には廃炉の作業員が5千人いるので、これを合わせると対象者は1万人になる。現場で重大な被ばくをした場合、ヘリで千葉の放医研に空輸すれば、1時間もかからない。だが、現実問題として東海村のJCO臨界事故のような大きな被ばくは考えにくい。

 常盤高速道路も仙台と東京の間が全通したため、救急車でいわき市か南相馬市まで30分程度で搬送可能だ。浜通りは地方では緊急医療体制が最も充実した地域になったと言ってもよいだろう。既に運用がされている福島県立医大のドクターヘリもあるので重複とも考えられる。県のポスターでも「全国でも例のない取り組み」と謳っている。だから、名称を「多目的医療用ヘリ」としてことさら区別したのかもしれない。

 こんな華々しいニュースがある一方、避難区域が解除された区域では再開した医療機関が受診する住民が少なく、また医療従事者や施設の維持管理をする人が見つからず人件費が高騰、約7割が赤字だという。帰還した住民は高齢者が多く、医療体制の充実を求める声が大きいため、どの自治体も努力しているが、元の人口の半分以下、中には1割以下のところもあるから補助金をもらっても所詮民間ではやっていけないのだ。

 診断をもとに医師が処方箋を出しても、それを持っていく薬局もない。浜通りの市町村にはかつて29の薬局があったが、現在はわずか2つにとどまり、しかも南相馬市にしかない。医療機関が近くにあっても薬をもらいに1時間も車を走らせなくてはならない。

 今回の多目的医療用ヘリ運用開始は話がヘリだけに「一足飛び」だが、医療全体のバランスのとれた政策にはなっていない。帰還した高齢者にとって、「ヘリより薬局」「ヘリより介護サービス」だろう。「やれることからやる」のはよいが、「やれることしかやらない」になってはいないだろうか。

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