日本エネルギー会議

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ある晴れた日に(2)

エッセイのタイトル「ある晴れた日に」はプッチーニのオペラ「蝶々夫人」のクライマックスで歌わるアリアをもじったものだが、晴れた日は太陽光発電の事業者にとっても幸せな日だ。現実には晴れた日でも朝夕は発電量が落ちる、雲がかかれば一瞬にして出力は半減する。年間の稼働率は10パーセント台であり、これは稼働率火力発電や原子力発電の60~90パーセントと決定的な差であり、風力発電の30パーセント台の半分しかない。ジェット機の飛ぶ成層圏や宇宙船のいる大気圏外であれば太陽光発電は一日中フルパワーで発電してくれるので、そのような空間で発電して地上に電力を送るという構想のもとに研究も行われている。

もし、2018年5月20日が一日中雨であったならば、下図の太陽光発電の部分をまるまる火力発電でカバーせざるを得ない。そして他の地域へ連系線で電力を送ることも、揚水式水力に水を揚げることも出来ない。朝晩の需要ピークには火力発電の焚きましや水力発電所のダムの放流が必要となる。
 
四国電力エリアの需給(2018年5月20日)

では、どの電源で太陽光発電の穴をカバーすればよいのか。その手がかりはそれぞれの電源の発電コストと二酸化炭素の排出量、それに対応速度の三つにある。
まず、発電コストは原発、水力発電、石炭火力発電の順に安いが、その内訳を見ると火力発電は燃料費が高く石炭でも5割、天然ガス火力では8割を占めている。原発も燃料費の割合が少ないが、水力発電は0である。また、化石燃料は価格や為替が変動しやすくコストの上振れリスクが高い。

資本費は運転してもしなくても償却が必要であり、原発は建設費が高いのでなるべく動かした方がよい。次に二酸化炭素排出量であるが、下図のとおり火力発電が群を抜いて多く特に石炭火力発電は最悪である。なるべく火力発電は動かしたくない。

出典:「原子力・エネルギー」図面集2015

最後に対応速度。太陽光発電の落ち込みをカバーする際の立ち上がりであるが、これは水力発電が最も早く瞬間的に立ち上がる。次は火力発電であり大きく長い変動はほとんど火力発電に頼っている。原発も負荷追従が可能であるが、操作性、安全性、経済性の観点から急激な出力変化は苦手で火力発電が優先される。揚水式水力発電は大きなものであれば、100万キロワットの出力があるが、時間的にはフルパワーで数時間しか持たない。それに事前に十分に揚水出来ていることが条件となる。難点は多いが、やはり今のところは主に火力発電でカバーするのが適当と思われる。

「ある雨の日」の対策としては、将来的には家庭やオフィスあるいは工場など消費側に1日~数日分の蓄電池を設置することが考えられる。「ある晴れた日」の過剰分を吸収してくれる働きも期待出来るが、これには蓄電池の価格低下が不可欠だ。現在、国産の家庭用の蓄電池が100万円をやっと切った程度。(テスラのパワーウォールは7kwhで36万円、10kwhで42万円。10年間の補償)ただし、日本製なら自治体の補助金も期待出来る(東京都葛飾区では驚きの最大20万円 注)。EVが普及してくれば、IT技術を駆使して自動でガレージにある駐車中のEVの蓄電池(日産リーフの場合、24kwh)をフル充電することが効果的だろう。そのような実験が電力会社も参加して既に行われている。リーフ10万台が対象となれば240万kwhの蓄電能力がある。これは大型揚水式水力の2倍の能力だ。

揚水式水力発電を使えば3割のロスが出るが、蓄電池では1割程度のロスで済む。なによりも電力会社側の設置費用の負担がないことが評価出来る。ただし、完全自由化になって電力が株のように刻々と値を変化させるようになると、最安値で買って蓄電して使うという消費行動が予想され、電源間あるいは事業者間のコスト競争が激化することが予想される。その結果、フタコブラクダはこの世から消えて需要曲線は限りなく平らになって行くと思うがどうだろう。
 
注)
・葛飾区内の住宅が対象で期間は2018/4/2~2019/3/29
・太陽光発電システム:8万円/kw、上限は40万円
・蓄電池:助成対象経費の1/4、上限は20万円
この他、東京都からの補助金も合わせて受けられる。

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