日本エネルギー会議

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福島の復興について考える(22)

(人口減少の受け止め方)
福島県の人口はいまからどのような対策を打っても、しばらくは減少が続く。原発事故が起きた2011年と翌年はそのことで大きな人口減があったが、その後は持ち直しており、一昨年からの減少幅の拡大は原発事故の影響とは言えない。原発事故があったから人口が減り続けているというのは間違いだ。

人口減の主な理由は若い世代の男女が県外、特に東京へ流出しているからだ。学校を卒業して残る人や他県から来る人は少ない。出生率は全国的に見ると悪くはないのだが、人口は確実に減っていく。特に山間地の会津地方は中通り、浜通りに比べて2倍のスピードで人口が減っている。既にこのスピードを前提として対策を講じなくてはならないほど、事態は深刻なのだ。もう回復は無理。いかにして縮小していくかを考えるしかない。
限界集落的になった山間部は、例えれば痩せてしまった人が、太っていた頃の服を着たような状態だ。行政機関や議会などは住民の数に対して人数が多過ぎる。平成の大合併以上の規模で合併をし、議会議員、役場職員を減らし、学校の統廃合を急速に進めるなど、すべてを身の丈に合ったものにする必要がある。ただし、高齢者の割合が増えるため、介護などの人材は減らすどころか増やさねばならない。元気な高齢者の割合を増やすように健康管理を充実させるとともに元気な高齢者に職を与えて地域を支えて貰う必要がある。そのための制度、しくみを早くつくらなければならない。
県や市町村の計画を見ると、危機の程度に対する認識不足が感じられてならない。県民、住民を心配させないようにということかもしれないが、それがいけないのだ。

県内全体での人口増減を示したのが下図である。(中央の白抜き部分が猪苗代湖)

この図で川内村の東側に位置する福島第一原発の事故の避難が続いている町村が、グリーンになっていて、数値は表示されていない。住民票を移動させていない住民が多くて数字の信ぴょう性がないからだ。その周辺は以前から解除されているが、福島第一原発の事故の影響で人口減少が著しい町村である。大玉村、いわき市の増加は避難者が定住したことによるもの。西郷村の人口増加は立地に恵まれたことで工業団地や宅地開発によるものだ。中央部グレーの地域も福島市、郡山市、白河市などの都市部で、山間部の町村からの移住と避難者定住により人口減少が緩和されている。これに対して、図の左半分の会津、奥会津は激しい減少となっている。

一番大変なのが人口5000人未満の町で、人口の減少率もこの7年間で10~30%である。人口減少につれて、ほとんどの商売が成り立たなくなるので、同時に働く場所もなくなる。観光資源でもなければ、町役場が最大の雇用主であり、地域における最大発注者でもある。こうした所に若い人を留めておくことは無理だ。商店街も含めほとんどの建物が高齢者の住居と空家になるため、人口数万人の市や町までの買い物、医療を受ける場合の足をどのように確保していくかが大きな課題となる。治安や防災、緊急時対応なども高齢者しかいない状態で、どのようにしていけばよいか工夫が必要となる。

山奥の限界集落から離れない人たちはそれなりの覚悟を決めて自給自足的な生活をしている。ガソリンスタンドが一軒もなくなり、車にガソリンを入れたり、暖房用の灯油を買いにわざわざ隣町まで行かなくてはならなくなったら悲惨だ。県としては残った人たちのためにも、家屋の取り壊しを含めた適切な縮小過程を考えることが重要となる。いわば地域の終活だ。人口の減った地域では、山林や田畑の手入れが出来ず、道路補修や草刈、洪水や土砂災害防止も行き届かなくなる。野生の動植物が増え人々の生活圏は小さくなってくる。福島県の山間部は除染後の浜通りの避難区域のようになってくる。このような中で、残った人々の生活を守るためには、帰還困難区域の中に復興拠点を設けているように、重点地域を決めてそこだけは守りきるという戦略が必要となろう。どんな山奥でも河川の改修が行われ、道路の通行が確保されていることはもう望めない。そのための選択と集中をどのようにしていくか、ハザードマップを活用した検討が早急になされるべきだ。それは切り捨てとは違う。もう無駄な投資をしている余裕はないのだ。そんなことをすれば共倒れになり、何も残らなくなる。 

一方、どうしても後世に引き継ぎたい地域の宝である文化財、無形文化財、日本の遺産ともいうべき優れた風景などは早急に保護策を行う必要がある。これらも至急調査を行い、残すべきものを選択しなくてはならない。また、残し方にも工夫が求められる。今、福島県はこの難しい撤退戦をどのように最小限の痛みで行えるかが問われている。福島県の今は人口減少、少子高齢化、都市への集中に悩む全国各地の未来の姿であり、これから中国、韓国など日本につづいて少子高齢化する国々の一つのモデルとなる。東日本大震災と原発事故で被災したため、この数年復興景気に沸き、自治体も復興事業に集中したため、人口減少という大きな流れが忘れられた感がある。福島県は行政も住民も早く目を覚まさなければならない。

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