日本エネルギー会議

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読者からのご意見_笠井篤(環境技術センター技術顧問/元日本原子力研究所)

メールマガジンNo.198に掲載された、此村守氏の【「原型炉」開発のための組織の条件】に関して意見を述べる。
此村氏は問題が多い高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」に関して、その組織上の事柄を問題視している。それは一因かもしれないが、問題の本質は「もんじゅ」の設立当初からの経緯を度外視しては語れない。筆者は当時日本原子力研究所(原研)でその経緯を観てきたので、それをここに述べて「もんじゅ」が抱えていたもう一面を明らかにしたい。

高速増殖炉開発の経緯
高速増殖炉の研究開発は当初、原研で行われていた。ところが、当時の原研は国の方針に反するとして、高速増殖炉の研究開発は1967年に発足した「動力炉・核燃料開発事業団(動燃)で行うことに変更された。この時に、原研で研究開発を行なっていた研究員は動燃へ行く人と原研に残るものとに分かれた。キーメンバーは原研に残り動燃へは移らなかった。その結果、動燃では研究員が不足し、民間企業からの出向者に頼わざるをえない状況となった。この当初の状況が、その後の「もんじゅ」の無責任状態を醸し出した根本要因といえる。
 
一方、「核燃料サイクル」構想が日本の原子力政策の根幹として位置付けられた。この「核燃料サイクル」はその当時先進国であったフランスが行っていた「核燃料サイクル」いわゆる「フェニックス計画」をそのまま踏襲したものであった。しかし、1990年後半になって「フェニックス計画」にはいくつかの技術的問題が生じた。そして、最終的には当時フランスで開発が行われていた高速増殖炉の実証炉「スパーフェニックス」がナトリウム漏れ事故を起こした。それがきっかけとなってフランス政府は1998年に「スパーフェニックス」の廃止を決定し、「核燃料サイクル計画」を断念した。

「もんじゅ」と核燃料サイクル
フランスの核燃料サイクルを踏襲していた日本の計画は、実証炉前の原型炉「もんじゅ」でナトリウム漏れ事故を起こしている。そして、「もんじゅ」の廃炉が決定したのである。高速増殖炉の泣き所は冷却系に大量のナトリウムを使う点にある。ナトリウムの安全性を含めた工学的技術が核反応安全と共に十分に確立されていない点が、高速増殖炉開発の最大の難点である。このように、「もんじゅ」は工学的技術的な問題を抱えていたのであって、それが、組織上の問題として解決されるとは到底考えられない。さらに経済性にも多くの問題が指摘されていた。「核燃料サイクル」の要は高速増殖炉と核燃料再処理工場である。高速増殖炉「もんじゅ」は廃炉が決まっている。一方の核燃料再処理工場もトラブル続きで何年もの完成延期が続いている。核燃料再処理工場のトラブルは、核燃料再処理行程の最終段階で行われる高レベル放射性廃液をガラス固化体にする段階で何回ものトラブルを起こしている。工場として完成した段階では新しい試験的な工程は行わないのが普通である。ところが、新しい工程をガラス固化体作成に試験的に導入し、それがトラブルを起こしているのである。

このように、核燃料サイクルの要となる2つの施設が使えない状態では、核燃料サイクルの破たんは明確である。それはあくまでも技術的な問題、技術の限界であって、決して組織や運用によって解決できるものではない点を強調しておきたい。

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