日本エネルギー会議

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現世代の責任

経済産業省は2016年に福島第一原発の廃炉にかかる費用や賠償費用の総額が21兆5000億円に上るとする推計結果を公表した。そのなかで、廃炉費用と汚染水対策費用の合計は2013年に発表した2兆円から4倍の8兆円に一気に膨らんだ。賠償費用と除染費用もそれぞれ7兆9000億円、4兆円に膨らんだが、先は見えている。やはり推定値の伸びが大きく、これから30~40年かかる廃炉の費用と汚染水対策費用がどの程度まで増えていくかが一番心配だ。

今年示されたエネルギー基本計画においても各電源のコストのうち、原発は「10円~」という上限を示さない表現となっており、他の電源では「~」は使われていない。資源エネルギー庁にその理由を聞いたところ、廃炉費用がどこまで伸びるかわからないので「10円~」になっているとの説明だ。他のエネルギーでも不確定な要素は十分にあると思うが、原発だけに「~」を使っているのは廃炉費用の推定に自信がないことを表しているとともに、意図的なものを感じさせる。

今年だけでも廃炉費用や汚染水対策費が増加する要素が数多く明らかになっている。廃炉計画は軒並み遅れて、その分終わりが延びることになり(経済産業省も東京電力も年度計画未達でも最終年度は変えないという無理をしているが…)、当然費用は膨らむ。ALPSで除染したのちにタンクに貯めた汚染水は、過去の除染工程が杜撰であったため、大半の水に基準値を超える核種が存在することが明らかになり、100万トンに近い水を再度、ALPSで除染しなくては海に放出出来ないことがわかったが、これも大変な費用増加になるはずだ。

国は資金管理を目的に「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に費用を蓄える基金をつくり、東電に毎年資金の積み立てを義務化するとともに、事故後初めて個別の費用を経済産業省から計画として公表することにした。それによれば、今年度から3年間で廃炉費用が約7千億円かかることになっている。今年度の費用は2183億円で、増え続ける汚染水対策として、タンクの設置などに668億円。3号機で予定されている使用済み燃料プールからの燃料取り出しに256億円が盛り込まれている。

経済産業省は廃炉の費用を抑制したいことと、廃炉を少しでも前に進める必要とのジレンマに悩んでいると思われるが、これらの費用を実質的に負担する消費者は、これを事前にチェックする術はなく、今年度の計画や予算が、こう決まりましたという報告を聞くだけだ。廃炉工事を円滑に進め作業者や住民を安全にという錦の御旗によって予算は正当化されるだけで、少しでも国民や消費者の負担を軽くしようという側面は確認することが出来ない。

実際に仕事をする原子炉メーカーやゼネコンにとって、これは随意契約とともに、都合の良い仕組みだ。工事を監理する東京電力の担当者にとっても総括原価方式で使った費用をそのまま電気料金に載せていた頃と同じような仕事が出来る。東京電力とメーカーなどとの癒着の危険性もある。事故を起こした原発の廃炉工事は建設工事や運転中の定期検査工事と違って、研究開発的要素が多く、やってみてうまく行かなくても厳しく咎められることはなく、逆にさらに費用のかかる工事が次に待っているというメーカーやゼネコンにとっておいしい仕事だ。創意工夫で予算より安く出来た場合には当該メーカーやゼネコンには優先的に仕事を発注するなどのメリットを与える仕組みを考えるべきだ。(そうなるとオーバーな見積もりをすることが心配だが、それを阻止出来るかは東京電力の担当者の腕にかかっている)

原子力規制委員会・原子力規制庁は工事内容を審査するだけで、費用については査定する権限も能力もなく、会計検査院に微かな期待を寄せるしかない。福島第一原発の事故の始末は現世代では終わらす、次世代、次々世代までかかることは明らかで、廃炉などの費用の負担は将来の世代に重くのしかかっていく。せめて、廃炉などの計画、予算、執行状況が合理的、経済的に行われているかを監視する体制を経済産業省から独立させたかたちで創ることが現世代の責任ではないか。

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