日本エネルギー会議

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文明と原子力(1)

文明と原子力について考えてみたい。
文明とはなにか。「人類が作り出した高度な文化あるいは社会を包括的に指す」などの定義があるが、分かりやすいのは「明治時代の蒸気機関車」だ。いままで馬や牛を使って人や物の移動をしていたが、それを人間が発明した蒸気機関により石炭を燃やすことによって得られる蒸気を使って行なう。その目的は人に物質的時間的余剰・余裕を作り出すことだ。物質的に生活を豊かにするにはエネルギーが必要で、エネルギーが得られなくなればいかなる文明も途絶える。

人類は太陽光エネルギーで農業を行い、さらに太陽光によって光合成した結果である薪や炭などを使ってきたが、近代に至り効率の良い石炭、石油、天然ガスなど地中から化石燃料を取り出して使うようになった。エネルギーの使い方も直接燃やすのではなく電気の形に変えて使うことが多くなっている。その結果、莫大なエネルギーを利用しやすい形で供給することが出来るようになり、大量生産、大量消費が可能となり、文明をさらにステップアップすることが出来た。

原子力が電力エネルギーとして使われ始めたのは今から数十年前のことだが、原子力発電の技術はいま先進国から途上国へ伝わりつつある。原子力はそれまでの化学的な燃焼ではなく核分裂によって熱を得る方法であり、原理の違いから従来の方法とは桁違いの効率で大量のエネルギーを得ることを可能にした。

さらに核燃料サイクルを完成させればウランだけでなく副産物のプルトニウムからも熱を取り出せ、人類は今後2000年間エネルギーを確保出来て、当面資源問題から開放されると考えられた。原子力は核分裂にあたって二酸化炭素を出さないという利点もある。うまく使えば文明を長く、かつ進化させる力となる。原子力による電気エネルギーの生産は文明史上画期的なことであった。さらに電力の生産に限らず原子力が船の動力など輸送機関に使われたり、溶鉱炉など産業用の熱源や地域暖房に使われたりすることも考えられた。これが世界に広がり人々の活動を支えるエネルギーとして圧倒的な存在感を持つようになれば、「石油文明」「自動車文明」などのように「原子力文明」と呼ばれるようになるはずだ。
 
文明を発展させる発明にも長所・短所、利点・欠点がある。ノーベルの発明したダイナマイトは鉱石の採掘を劇的に効率化したが、扱いを誤って多くの死傷者も生み出した。また戦争に使われることで多くの犠牲者も出した。ジャンボジェットは一度に500人の人を運べるが、墜落すれば一度に多数の死者が出る。新幹線が衝突するようなことがあれば在来線の何倍もの犠牲が出る。大きさ、スピード、強さなどが増すほどに事故の際の損害も増すことになる。
石油採掘で大規模な海洋汚染が発生したり、石炭火力が排出する二酸化炭素が地球温暖化を加速したりする例でわかるように、発生する問題には環境に対する影響も含まれる。近代の文明は資源の消費規模を劇的に拡大し、環境汚染や資源の枯渇の不安を抱えている。前近代文明がほぼ循環型の再生可能エネルギーを使っていたのに対して、近代文明は大型化によって資源収奪や環境破壊を招きやすくなっており、文明が文明を破壊することに繋がる恐れもある。
次回は文明の選択について。
(つづく)

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