日本エネルギー会議

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福島の復興について考える(25)

(大事な視点)
世紀末、日本の人口が半減して6000万人になるとの予測が話題になっている。同じ時期に福島県の人口が現在の180万人から90万人以下になる可能性は十分にある。県が人口減少対策として「出生率を高める」、「若い人が首都圏などに流出しないようにする」、「若い人と高齢者を首都圏や他県から呼び込む」、「外国人を呼び込む」、「県民の寿命を伸ばす」などの努力をするとしても、それだけでは十分ではない。必要なことは人口減少が単に頭数の問題ではないことに気づくことだ。

福島第一原発の事故が起きた2011年3月から8年が経過しようとしているが、この間に県内で18万8千人が亡くなり、10万8千人が生まれた。この自然増減に対して、社会的増減として県外への流出が29万8千人、県外からの流入が12万3千人。この結果、190万人いた東日本大震災と原発事故の経験者が8年間で48万6千人県内からいなくなった。また、福島県内で大震災と原発事故の経験のない人が23万1千人になったということだ。近年、福島県では月に2千人のペースで人が亡くなっており、月に千人のペースで人が生まれている。これほどの人の入れ替えはどのような意味を持つのかを考える必要がある。

通常、企業や学校では社員や学生は毎年退職や卒業するかわりに新入社員や新入生が入ってくるで、全体の人数としては大きな変化はない。事務所・工場や校舎はそのままで、それ以外にも管理者、教職員、職務規定、校則、マニュアル、教科書などが引き継がれている。またさまざまな行事や慣習も途絶えることなく行われている。こうしたものによって人が入れ替わっても同じように生産活動が行われ、教育が行われてブランドがいつまでも保たれているわけだ。これと同じように、高齢者の死亡や子供の誕生、県外からの移住、外国人の帰化などで人は入れ替わっても、その土地の風土、伝統、気質、県民性、祭り、宗教、習俗、歴史、習慣、人のつながりなどは引き継がれていくので地域として継続することが出来ている。ただ、人の入れ替わりが激しい場合は、特に意識しないと特性が失われてしまう。福島県の場合、福島第一原発の事故で県民の一部が県外の避難先に定住し、過疎化、高齢化も著しく進んでしまったため、最初に述べたように入れ替わりの状況は厳しいものがある。

危惧されるのは、福島県の歴史や文化や産業、それに東日本大震災や原発事故の際の貴重な経験が引き継がれなくなることだ。高齢化は高齢者の死亡数が増えていくことであり、若年層の減少は引き継ぐ側が少なくなることだ。また、県外から来た人や外国人は吸収力にハンディもある。2011年以降に生まれた小中学生や県外から移住してきた人、外国人には特に積極的に働きかけていかねばならない。祭りなどの地域行事への参加や地元の伝統的産業を体験することを学校教育に組み込むべきで、企業や団体もこれに積極的に協力しなくてはならない。東日本大震災や福島第一原発の事故のことも忘れずに教育に入れたい。歴史、文化といったものは福島県として将来発展の礎になるものであり、しっかり継承していく必要がある。福島の復興を考えるときの大事な視点だ。

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