日本エネルギー会議

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文明と原子力(2)

「諸行無常」。すべての形あるものは移ろいやすくいつかは滅びる。現代科学も「エントロピーの法則」を主張するが、生物学者の福岡伸一博士によれば、生物だけは自らを作り変えることでこの法則に対抗しているという。文明は黎明期から時を経て次第に興隆し世界に向かって広がっていくが、その途中さまざまな問題に遭遇する。生物のようにそれに適応出来ている間、文明は人々によって選択され栄えるが、適応出来なくなれば滅びてしまう。

文明が直面する問題の一つは、文明が弛まない前進を続け、より強大なものに発展しようとすることだ。「どうあっても先に進もうとする進歩主義」は文明そのものの滅亡につながる可能性がある。新幹線は強力なモーターにより高速で走行するが、同時に必要な時に直ちに止まれるだけの強力なブレーキの装備が必要だ。強力なブレーキの開発が出来なければそこで新幹線は限界となる。飛行機の墜落事故を減らすためにエンジンなど多重化すればその重さで離陸出来なくなり実用性が失われる。かつて原発は圧倒的な経済性を誇っていたが、福島第一原発の事故が起き、世界中で原発の過酷事故対策が強化されることで経済性が低下し原発は以前ほど選択されなくなっている。原発に限らず、今期待されている再生可能エネルギーにしてもメガソーラーや風車の大型化には限界があることは明白だ。水力発電でさえ、中国の三峡ダムに見られるように、万一決壊すれば国家の存立にかかわるようなすさまじい被害が生ずる。

次なる問題は、文明が世界中に広がることによって生ずる資源枯渇や環境破壊である。文明が必要とする燃料や土地などの資源が枯渇すれば文明は存続出来なくなる。電源に関して言えば石炭、石油、天然ガス、ウランなどの鉱物資源がその対象だ。また、身体の中の老廃物が溜まりすぎると命の危険があるのと同じで、文明が出す廃棄物が上手く処理出来ずに環境を害することになればその文明は危機を迎える。今日、石炭は温暖化を促進するとして金融機関からの融資を断られるなど二酸化炭素の問題に苦しみ、石油文明の落とし子であるプラスチックの廃棄物が石油文明を脅かしつつある。文明の持つ欠点が致命的であるとされれば文明は徐々に衰退する。

文明が直面する問題には戦争やテロもある。大国の覇権争いや格差拡大による紛争、宗教的対立はしばしばその攻撃の矛先を文明の象徴に向ける。何故なら文明こそがその国や地域を成り立たせているからである。戦争やテロに弱いのはどのような文明か。原発や大型火力発電所、大型水力発電所は強固に防御されているが、逆に集中電源から送電線で遠方の消費地に送るシステムが弱点となる。燃料を遠方から輸送してくる場合もそこが弱点になる。戦争やテロを考えるとすぐにリカバリーが可能で生産と消費が近い分散型が有利だ。今、日本で「油断」が起きると分かっていれば、人々は競ってバッテリー付きソーラーの購入や裏山から薪を採れる地域への移住を考えるだろう。

文明は絶えず異なる文明との競争に晒される。文明はこれに打ち勝って行かなければならないが、勝敗を決めるのは何なのか。経済性、安全性、安定性、環境性、持続性、強靭性などそれぞれが評価されるとともに総合点が高いもの、将来性があるものから選択されるはずだが、話はそう単純ではない。次回はその勝敗の行方を左右する「文明と文化の干渉」について。
(つづく)

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