日本エネルギー会議

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投資のプロが見た原発

かつて東京電力の荒木社長は「兜町を見て仕事をせよ」と社内に号令をかけたが、その兜町は現在の電力会社をどう見ているのだろうか。楽天証券のHPに、「3分でわかる!今日の投資戦略 電力株への投資はリスクが高いと考える理由」が掲載されている。(2015/1/29) 筆者は元ファンドマネージャーの楽天証券経済研究所窪田真之氏だ。記事の中で、窪田氏はリスクの高いと考える三つの理由の一つとして「原発事業を有する電力9社は投資対象としてリスクが高い」ことを挙げて次のように書いている。

原発事業を行ってきた電力9社(東京電力・関西電力・中部電力・九州電力・中国電力・四国電力・北陸電力・東北電力・北海道電力)への投資は、リスクが高いと判断されます。それは、核燃料サイクル事業が実行可能か否か、現時点でわからないままだからです。核燃料サイクルを実施することを前提とすると、使用済み核燃料はプルサーマル発電や高速増殖炉で新たに発電を行うための「資源」となります。しかし、核燃料サイクルを断念する場合、使用済み核燃料は、最終処分に莫大なコストがかかる「核のゴミ」となります。

今の日本は、技術的にまったく完成のメドがたっていない核燃料サイクル事業が実現することを前提に原発事業を推進しています。つまり、使用済み核燃料をバランスシートでは「資源」として評価しています。ところが、最近になって核燃料サイクルは実行不可との見方が強まってきています。もし、政府が「核燃料サイクルを実施しない」と判断を変える場合、国内に積み上がった使用済み核燃料は「資源」から「核のゴミ」に変わります。その最終処分コスト負担によって、電力会社の財務は著しく悪化する可能性があります。

まるでオセロゲームのように今まで白であった石が黒になる可能性があると窪田氏は考えているのだ。東京電力の財務諸表を見ると、2018年3月31日現在、確かに核燃料の科目に装荷核燃料120,509百万円と加工中等核燃料539,858百万円が記載されていた。この中には福島第一原発、第二原発と柏崎刈羽原発分が入っていると思われる。事故炉である福島第一原発に入っている使用済み燃料や炉内の溶け出した燃料はどのような扱いになっているか気になったので現地のコミニュケーショングループに問合わせてみたところ、事故になった福島第一原発の燃料は資産にはなっているものの価格は備忘価格の1体1円。加工中等核燃料は処理のために再処理工場に搬出した使用済み燃料のことで処理後プルトニウムは価値を持つが、残渣は資産ではなくなるとのことだった。

電力各社の有価証券報告書を見ると2018年3月31日現在の連結財務諸表の資産の部には加工中等核燃料が次のように記載されている。
北海道電力   176,264(単位百万円)
東北電力    125,248
東京電力    539,858
中部電力    139,715
北陸電力     68,495
関西電力    429,435
中国電力    173,393
四国電力    113,363
九州電力    207,009
日本原電    101,894
※株式は非公開なので窪田氏の記事にはない
※10社合計で2,074,674百万円(約2兆円)となる。

使用済み燃料を資産とする根拠である核燃料サイクルに関しては、先頃、国の作業部会が核燃料サイクル政策の柱となる高速炉の開発計画について「本格利用が期待されるタイミングが21世紀後半」とするロードマップの案を決め、従来示していた高速炉実用化の時期を最長で100年ほど後退させた。経産大臣がもんじゅ廃炉決定の記者会見で言及していたフランスとの共同開発はどこかに飛んでしまったようだ。再処理がうまく行ったとしても、高速炉なしでプルサーマルだけでプルトニウムを消費するのはとてつもない時間がかかる。窪田氏が言うように電力会社が大量に抱えている2兆円の使用済み燃料が座礁資産化する恐れがある。

政府や原子力業界が核燃料サイクルに固執する表向きの理由は国産エネルギー確保であるが、裏には電力供給の大半を担っている電力会社の財務状況があると考えられる。使用済み燃料を再処理せずにワンスルーで処分することにすれば、その瞬間、使用済み燃料の資産価値がなくなるからだ。これは以前から私が指摘している「日本原燃に万一のことがあれば、日本原燃に対する投資、債務保証などによって電力会社が財政破綻する」と同様に深刻な問題だ。国も電力会社も財政破綻だけはなんとか回避しなくてはならないと考えるから核燃料サイクルや高速炉の旗を降ろせないのだろう。

だが、これは解釈次第で日産で問題になっている有価証券報告書の不実記載になる可能性がある。監督官庁である経済産業省、財務省が先頭にたって各社の監査役、公認会計士、証券監視委員会、大株主である金融機関、もしかするとメディアも巻き込んで、各社の使用済み燃料が資産であると言い続けているようだが、兜町はすでにこれに疑惑を抱いているのだ。

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