日本エネルギー会議

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保守や廃炉の技術

今月の18日、菅官房長官は記者会見で、日立製作所が英国での原発新設計画の凍結を決めたことに関し、「原発輸出はこれからも進めるべきだ」と語った。今後も原発輸出が必要だとする根拠として「安全運転や東京電力福島第1原発事故の収束を実現するためにも人材、技術、産業基盤の維持・強化」を挙げた。確かに世界が原発ルネッサンスに沸いていた頃、国内での建設が止まっている状況を打破して行こうと、当時の経済産業省の柳瀬原子力政策課長のリードで「原発立国計画」が作成された。これは技術力を維持するための名案だと産業界もこぞってその実現を期待したものだ。

国内外で建設がなければ、官房長官が心配するように運転や事故の収束に携わる人材、技術、産業基盤が維持出来ないのであろうか。むろん、建設があったに越したことはないが、なくてもそれは可能だ。むしろ、ないものねだりの輸出にこだわってしまうと負担になって東芝のように企業が潰れてしまう。ここは運転保守と廃炉に焦点を絞って、儲かる仕組みを作っておくことの方が原子力産業にとって必要なことだ。儲かるどころか損をしそうな件にはいくら国が推奨しても民間企業は手を出さないし、人も投入しない。

私は現役の頃、原発の運転や建設の現場にいたが、メーカーの人が「メンテナンスは儲からない。やっていけているのは建設があるからです」と言っていた。私は儲からないというのはたぶん嘘で、建設がいかに儲かるものだと言う意味だと思っていた。定期検査などは発注者も独占、受注者も独占の構図の中で、しっかり儲けることが出来たはず。他社の事故でも対策の水平展開で仕事が受注出来た。某社の原子力担当副社長が「電力会社はメーカーに早め早めの取り替えを勧められて、いつも儲けられている」とこぼしていたのを思い出す。

現在の保守と廃炉においてもこの構図だけはしっかりと引き継がれている。新規制基準に合わせるための追加工事でメーカーもゼネコンも相当な工事量をこなしたはずだ。取り替え用の機器や部品の製造能力はしっかりと維持することが必要だが、これについて国内外のメーカー間で共同の事業とすることも考えられる。運転が終われば廃炉工事が待っており、メーカーは体制をそれなりに整えられれば、今後数十年間の受注は確保出来て、海外の廃炉工事を受注できる可能性もある。

問題となるのは、原子炉圧力容器のようなビッグコンポーネントの製造工場だろう。これはおいそれと取り替えるものではなく、建設時の発注に頼らざるを得ない。それに工場の設備も巨大なため維持費もかかる。海外での原発建設が中国、ロシアに専有されると彼らの下請けでは苦しい。
原発以外に深海や宇宙で使う機器にこの技術と設備を活かすことを考えることが大切だ。

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