日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

福島の復興について考える(32)

福島第一原発の周辺の自治体では、避難解除後も人口が元にもどらないことが最大の悩みとなっている。復興事業として国の復興予算で作られた医療機関や研究施設などが少ない労働力を奪い合っている。このままでは消費者も労働者も不足して、結局商業も製造業も復活出来ない。先日訪問した富岡町にある東京電力の廃炉資料館でも、トイレの清掃作業をしていた女性従業員にこの近くの町の人ですかと尋ねると「1時間かけて、いわき市から通っています」と答えた。富岡町で小中学校を改修して温水プールまで造っても、生徒はなかなか集まらないようだ。

だが、ここで気をつけなくてはいけないのは、復興のイメージが間違っている可能性があることだ。8年前、東日本大震災と原発事故が起きた頃、福島県の各地域では既に人口減少と高齢化が始まっていた。しかし、浜通りは原発があったおかげでなんとか人口と子供の数を維持していたのである。事故から今日までの間に浜通りも含め県内ではその傾向はますます進み、これに反して世帯数は増加の一途をたどっている。図のように全国的な傾向である。

総務省の統計によれば、2015年の全国と福島県の世帯人員別の世帯数は、次のようになっている。

福島県も全国平均と同じように、1人暮らしが30%以上で1人から3人の世帯が全体の80%近くも占めている。4人以上の世帯はわずか20%しかない。かつて夫婦に子供二人は標準的な家庭として扱われてきたが、いまやわずか13%。子供がいないのはあたりまえなのだ。テレビの地方での田舎暮らし特集や地元の大家族の家訪問は、特別な例をレポートしていると考えた方が良い。

福島県や浜通りの復興のゴールとして夫婦に子供二人のような姿に戻そうというのは時代錯誤であることを知る必要がある。帰還困難区域の自宅に一時立ち入りをすると時間が止まっているように感じるが、すでに時代は変わっているのだ。高齢の夫婦、高齢の単身、ひとり暮らしの若者が圧倒的に多い状況を当面のゴールと考えるべきだ。

高齢化についても、東日本大震災・福島第一原発の事故の後は、高齢化していることが当たり前なのだ。その先はさらなる高齢化であり、これは東北のどの県も同じだ。そして2020年を過ぎると、65歳以上のいわゆる高齢者人口は人口5万人未満の都市では減少に転じると予測されている。

事業者側からすれば、スーパーやコンビニ、銀行なども人口が減れば少なくて当たり前だ。老人ホームや介護施設が不足するのは全国どこでも同じ。今のように、避難解除した地域に人口が戻らないのにスーパーや銀行が再開しているのは、極めて人為的なことである。また、若者が少なくなれば彼らを相手にする店やサービスは成り立たない。ましてやネット通販による購買が多くなれば出店は期待出来ない。事実、郡山市、福島市、いわき市、会津若松市など福島県内の主要都市の駅周辺でさえ若者向けの商業施設や店舗は厳しい状態になっている。若者の存在を確認したければ、通学時間帯に駅に行くか昼以降にスタバに入ることだ。復興の目標はこうした状況をしっかり頭に入れて設定する必要がある。その具体的な中身についての提案は次回以降とする。 

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter