日本エネルギー会議

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垂直統合型の日本

マグドナルドが100円マックを発売したとき、どうやって100円で出来るのかと不思議だった。調べて見ると、出来る理由は小麦粉、牛肉、野菜など素材毎に一番安く入手出来る材料を国内だけでなく世界中から調達していること、徹底したマニュアル化により賃金の安いアルバイト店員でオペレーション出来ていることだった。もちろん国を跨ぐ大量輸送システムとインターネットによる情報通信が前提である。

先日、平成時代に何故日本企業が世界ランキングの上位から滑り落ちたのかについて、経済学者の野口悠紀雄氏が語っているのをYoutubeで見た。野口氏は「日本の企業、特に製造業は大企業を頂点とした垂直統合型の体制でやってきたのに対して、欧米や中国が水平統合型のやり方に切り替えたのが最大の原因だ」と指摘していた。なるほどスマートフォンなどのハイテク製品もマックと同じやり方で国境を越えて最適調達をしている。日本製部品を使っている割合が多いようだが、いずれも部分的であり韓国企業などとの競争が厳しいらしい。

日本が得意なのはメーカーを先頭にその下に系列企業がつながって何重もの階層からなる組織を作っていく昔からのやり方である。原発について考えても垂直統合型の考えが貫かれている。 原発の場合、発注者である電力会社が最初からメーカーを決めてしまっている。沸騰水型軽水炉を選択した会社はメーカーとして日立、東芝と契約し、加圧水型軽水炉を選択した会社は三菱重工以外と契約する。国産化を進めるため、海外メーカーとの契約は初期を除いてありえない。

これは製造・建設だけでなく、メンテナンス・改造工事に関しても製造・建設をしたメーカーに発注され、メーカーは系列企業以下の垂直統合体制で仕事をする。このやり方は廃炉工事にも引き継がれる。メーカーは建設さえ取ってくれば、その後数十年にわたって確実に受注することが出来るのだ。原発の改造工事や大型機器の取替工事ではかつて納品したり建設したりしたメーカーが99パーセント受注する。

メーカーが傘下の系列企業を競わせることが可能であるが、今まで使ったことのない系列以外の企業を使うことは、よほど特殊な技術分野でなければありえない。したがって、100円マック方式は取れないのだ。これを高コスト構造と言ってもよいが、「原子力ゆえの安全性、信頼性が大切なので経験と実績のあるところに依頼する必要がある」と正当化している。私が現役の頃、日本原電が沸騰水型軽水炉の核燃料を収納するチャンネルボックスを、日本メーカーとアメリカのメーカーに競わせるため両方から半分づつ購入していたのは珍しい事例だった。 

水平統合には発注者に受注者の力を判定する高い技術的能力が求められるが、垂直統合の場合は最初で決まってしまうので、その後は徐々に発注者が受注者の言うことに従わざるを得なくなる。垂直統合の弊害とも言うべきこうした技術的ブラックボックス化と査定の無能力化に対して、問題意識を持って挑戦したのが、2003年から始まった日本原電による定検工事と廃止措置工事の直営化プロジェクトであった。すなわち、メーカー以下の体制を使わず、一部の工事とはいえ電力会社社員が直接現場で手を下す思い切ったやり方であった。これは水平統合ではないが、少なくとも垂直統合方式による電力会社の技術の空洞化を食い止め、査定能力の復活を狙ったものであり、一定の成功を挙げた。さらに事故時の現場対応を全面的にメーカーや下請け依存せず、電力会社社員が手を下して出来るようになる効果も得られた。こうした試みがもっと早い時期に行われ、それが全電力に広がっていれば、日本の原子力開発ももう少し違ったものになったかもしれない。

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