日本エネルギー会議

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大きな負荷

8年前に福島第一原発の事故が発生した際、福島県浜通り地方の町は、国からの指示により「全町避難」となった。「全町避難」とは住民が一人残らず町を去ることであり、町長以下、役場の職員も全員が町から離れることを意味する。役場職員のほとんどは町に住んでおり家族もいる。彼等は家族を避難させることより、役場職員としての仕事を優先しなければならない。これは警察や消防の職員も同じことである。

東日本大震災では地震で役場庁舎が壊れたり、津波で流されたりしたところもあったが、福島県浜通りでは庁舎が健全でも使うことは出来なかった。避難した先の学校などの施設内の一画に机を並べて臨時の役場をつくり、寝るまもなく各方面への連絡や住民の世話に当たらなくてはならない。これがどれほど大変なことかは経験した者でなければわからない。今、各地で避難計画に基づいて事故訓練が行われているが、役場自体も他の地域に移動して全住民の避難誘導から避難先でのケアを実施しなければならないことを理解しているのだろうか。 

避難が解除になって役場自体が元の庁舎に戻ったら問題は解決するわけではない。福島第一原発の事故の場合、多くの自治体では職員が子供の学校などのために避難先など離れた場所に住居を構え、自身は遠距離通勤している。先日富岡町から送られてきた「議会だより」に次のような議員と当局のやりとりが掲載されていた。

昨年12月の富岡町議会定例会での質疑
 
(W議員)
今後の財政状況を鑑み、行政経費節減の観点から、通退勤バス費用対効果が重要になると考える。町職員の中で対象としているバス利用者は何名か。また、現在の利用状況と運営経費の原資と総額は。

(当局)
対象者は郡山市・県中地区の46名で、現状では1日平均5名程度の利用が続いている。財源は町単独費で昨年度は約3000万円、今年度は運行台数やバスの小型化などを図り、1150万円を計上している。
注. 郡山市から富岡町までは約200キロ。高速道路を使っても2時間程度かかる。事故のあった2011年から約6年間、富岡町役場は郡山市の仮設の建物にあった。そのため郡山市やその近くに家を構えた職員が多い。

(W議員)
46名中5名程度の利用にとどまっている理由をどう考えているのか。

(当局)
仕事の内容や状況により、退勤時間が一定にならないことで利用しにくい状態になっていると考えます。また集合場所からの乗降車となり、使い勝手が悪い運行になっているのも乗降する職員が増えない一因と考えています。

(W議員)
来年度も予算計上しているが、本事業創設の段階から現状は予見でき
たと考える。直ちに見直すべきではないか。

(当局)
費用対効果の面からも運行を継続するか否かを検討する時期と認識しています。職員の健康保持や冬季間の安全確実な通退勤の確保、また職員労働組合からも継続の申し入れもあり、慎重に検討していくことが必要であると考えています。

町の職員数は約140名。現在、30人ほどが富岡町内の自宅やアパートから通勤し、他にも近くの広野町、楢葉町からも通勤者がいる。多くの職員はいわき市からJR常磐線あるいはマイカーで通勤しているが、次に多いのが郡山市からの通勤であり、役場が手配しているバスの他、マイカーによる通勤も行われている。その場合はガソリン代相当額の通勤手当が支給されている。

浜通り地方では、どの自治体も職員が不足している。特に技術系で資格を持っているもの、保健関係が厳しい。退職した職員もいるため、毎年採用をしているが、町の出身者でない者が半数で、採用後に先輩が案内して町の見学会を実施している。

職員が対応しているのは元住民と新住民であるが、元住民はまだ避難先から帰還しない人が多く、(富岡町の場合は、居住者はまだ全住民の6パーセント)全国に散らばっているため連絡を取るのも大変である。また、帰還した人は高齢者が多く、インフラ復旧も途上であり業務量は多く、長い通勤時間もあって職員ひとりひとりの負荷が大きいようだ。こうした状況であることを国は十分理解する必要がある。

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