日本エネルギー会議

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何故、原子力依存度を出来るだけ低下させるのか

第5次エネルギー基本計画には、「原子力への依存度を可能な限り低下させる」と繰り返し6ヶ所も書いてあるが、そのフレーズは国会の質疑でも、安倍総理や経産大臣によって頻繁に使われている。安倍政権が原発再稼働を熱心に推進しようとしている中、このフレーズを聞くと違和感を覚える。と言うのも基本計画では、原子力について次のように評価しているからである。
・原子力は現状、実用段階にある「脱炭素化」の選択肢のひとつである。
・原子力の位置付けとして、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる低炭素の準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重 要なベースロード電源である。

何故、基本計画に原子力を維持、増大と書かずに、可能な限り依存度を低下させると書くのか。不思議である。計画を詳しく読んでも、その理由がわからなかった。そこで、資源エネルギー庁に直接電話をして、「原子力を可能な限り低下させる理由」を質問してみた。以下は資源エネルギー庁長官官房総務課政策戦略室の担当者とのやりとりである。

-可能な限り依存度を低下させると書いた理由は何でしょうか
「ひとつの電源に依存しすぎないようにするためです」

-今は、原子力は数パーセントであり依存するといった状況ではありませんね。また、福島第一原発の事故前の2010年でも25パーセント程度で依存しすぎてはいないと思うのですが。
「そうですね。暫くお待ちいただけますか」数分間待たされる。
「2011年に25パーセントであったものを2030年にはあるべき姿として20~22パーセントに抑えるということです」

-原子力が国民に評判が悪いので、それをなだめるためにこのフレーズを入れたということではないですよね。
「それはありません」

-基本計画では原子力のことを実用段階にある「脱炭素化」の選択肢のひとつ、優れた安定供給性と効率性があり、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源と高く評価していますね。それなのに何故、依存度を出来る限り低下させなくてはならないのでしょうか。
「少々お待ちください」と再び10分程待たされる。
「原子力は2030年のエネルギーミックスにおいて3E+Sの優れた電源として評価しています。しかし、2030年では2010年よりパーセントを落とすことになっています。」

-それは依存度を低下させなくてはならない理由にはならないでしょう。私は何故原子力を維持あるいは出来るだけ増やすと書かないのかと思っています。少なくとも依存度を出来る限り低下させるとは書くべきではないでしょう。
「この方針はひとつ前の第4次エネルギー基本計画にも書かれていて、それを踏襲しています」

トータルで30分程度「少々お待ちください」があって、先方は内部で相談をしている様子であったが、回答はしどろもどろで依存度を低下させる明確な理由は聞くことは出来なかった。電話を切ってから、原子力に関する方針を踏襲しているという第4次エネルギー基本計画をあらためて読んでみると、次のような文があった。(下線は筆者)事故前に比べ、我が国におけるエネルギー問題への関心は極めて高くなっており、原子力の利用は即刻やめるべき、できればいつかは原子力発電を全廃したい、我が国に原子力等の大規模集中電源は不要である、原子力発電を続ける場合にも規模は最小限にすべき、原子力発電は引き続き必要であるなど、様々な立場からあらゆる意見が表明され、議論が行われてきている。政府は、こうした様々な議論を正面から真摯に受け止めなければならない。
また、こうも書いてある。
東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、2030年のエネルギーミックスの実現、2050年のエネルギー選択に際して、原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。

こうした部分は第5次エネルギー基本計画の文章から削除されている。これがあればまだ低下させる理由が推測出来るのだが、今回の第5次ではわからない。原発問題について、政治家や役人がエネルギー基本計画に「原子力への依存度を出来る限り低下させる」という文言を理由も示さずに挿入して世間や反対派からの攻撃をかわそうとするのはいかがなものか。政権維持や主管官庁への批判をかわすためには、そのくらいのことは臆面もなくやるという情けないことになっている。閣議決定される基本計画は言葉の定義を明確にし、内容においてはロジックも整っている必要がある。エネルギー基本計画は英訳もされているが、これでは日本の恥を世界に晒しているようなものだ。
基本計画では「東京電力福島第一原子力発電所事故の原点に立ち返った責任感ある真摯な姿勢や取組こそ重要であり、これが我が国における原子力の社会的信頼の獲得の鍵となる」と書いているが、基本計画において原発依存度を低下させる理由も示さずによくそんなことを書けるものだ。

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