日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

労働力減少に見舞われる原発

2017年に出版されたベストセラー「未来の年表」河合雅司著(講談社現代新書)は、いまだに書店の新書のベストセラーの棚に並んでいる。 この本は表紙に「2020年 女性の半数が50歳超え」とか「2039年 火葬場が不足」などとショッキングな表題が紹介されおり書店で思わず手にとりたくなる。サブタイトルに「人口減少 日本でこれから起きること」とあり、人口問題を取り上げた本の魁となった。この本の内容はワイドショー「ミヤネ屋」でも取り上げ、著者がゲスト出演した。今でもyoutubeで見ることが出来る。

日本の原発の再稼働、新増設については、新規制基準に合わせるための追加投資による発電コストの上昇、住民の納得する避難計画の策定の難しさなどがハードルとされているが、「未来の年表」を読めば、最も心配なのがこれからの急激な人口減少、高齢化による労働力不足だということがわかる。

エネルギー基本計画に取り上げられている電源を労働力の観点から評価すると運転中、最も労働力を必要としないのは水力発電、太陽光発電、風力発電など再生可能エネルギーで、火力発電や原子力発電はそれなりに労働力が必要だ。火力発電は燃料を海外から運んでくるにも大量のタンカーによる長距離の運航が必要であるが、近年、船員不足も問題になっている。

原発は大出力であるため、キロワット当たりにすると労働力は思ったほどでもないが、実際の発電所では交替勤務の運転員を1機あたり数十人は必要としており、協力会社の作業員も同数程度必要とされている。水力発電所の無人化が進んでいるのとは対照的で、原発の場合は自動運転化が進んでも、一定の人数は中央制御室に座らせておく必要がある。定期検査ともなれば、2~3ヶ月の間、現場に約1000人の労働力が必要となる。

原発は火力の仕事に放射線管理、核防護、事故対応、廃棄物取り扱いの仕事がプラスされ手続き書類の多さも目立つ。とにかく原発は人手を要する。製造業や農業などではこれから自動化が進み、必要となる労働力も減少する可能性が大きいが、原発は設備が複雑で多岐にわたっており、汚染管理の必要から細かく部屋が区切られている。すでに燃料交換などの作業は自動化されているが、ポンプやモーター、弁などの分解点検、組立などにロボットやドローンは投入しづらく省力化投資に見合うだけのメリットは期待出来そうもない。

「未来の年表」によれば今からわずか5年後の2024年には、全国民の3人に1人が65歳以上になる。その頃、数の多い団塊世代ジュニアは50~53歳で、その下の年代からは急に人数が少なくなるため、全国の職場はどこも完全に逆ピラミッド。少なくなった労働力を各産業で奪い合うようになる。現状は地方に行くほど人手不足が深刻化しており、今後は原発で働いてもらえる人の確保に赤信号が灯る。

対策としては日立・東芝と三菱がそれぞれ沸騰水型と加圧水型のメンテナンス専業会社をつくり、そこに従来の下請け作業員クラスまで全員を社員として雇い入れ、全国の原発の定期検査を順次こなしていくことが考えられる。また、いままで原発で外国人労働者を働かせることに抵抗感があったが、安倍政権が導入した労働力確保のための方策を活用し、メンテナンス専業会社が途上国から若者を募集し定着させることも考える必要がある。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter