日本エネルギー会議

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スマホを高く掲げる人々

福島第一原発事故当日、住んでいた富岡町から西を目指して隣の川内村に避難した際、若い男女が道路に出てスマホを高く掲げて、左右に振っている姿を度々見かけることがあった。何をしているのかと聞くと、友人と連絡を取りたいのだが、とぎれるので電波を拾っているのだという。私のガラケーも電波の強さをしめす針が三本とも立たないので、役場の職員に聞くと、川内村と田村市都路地区との境界にある峠まで行くと電波がなんとか捕まえられると教えてくれた。

郡山市の大きな避難所ではスマホを充電したい人がたくさんいた。しかし、スマホは携行しても充電用のソケットを持ってくる用心深い人はほとんどいなかったので、電源があっても充電ができなかった。まもなく、NTTが各種のソケットとパソコンを持ち込んで充電だけでなくいろいろなことが出来るようになった。その後、自動車に付けられる携帯用充電ソケットが販売されていることがわかったので早速購入して車に装備してある。

原発事故では避難するのは海岸からであり、当面の避難先は山奥である。山を越して内陸の都市を目指すパターンだ。必然的に電波状況はよくない。普段は川内村のような山奥でも集落や国道では大体携帯電話の電波は来ておりスマホは使える。しかし、災害時は繋がらないことが多い。電波が来ていないか、使う人が多くて回線がパンクしているかである。大地震や強い台風の場合には基地局のアンテナが故障したり、電源が切れたりすることがある。

最近、福島県は原発避難路をスマホで提示するシステムを作ったとのニュースがあった。空間線量率や道路の渋滞情報なども見ることが出来る。スマホの画面から居住地などを選択すれば、避難先までのルートや道路の狭隘箇所、迂回路、コンビニエンスストア、ガソリンスタンドの情報も提示し、県の「原子力災害に備える情報サイト」から閲覧できるようにするという。

県の担当者は「避難計画を熟知していなくてもすぐに逃げるためのツールとして役立ててほしい」と言っているようだが、果たして最新の情報が示せるのか。どうやって情報を集めるのかは明確に示されていない。いざという時は、何時間も前の情報など役に立たないどころか障害になりかねない。かつて国が福島第一原発の事故以前に100億円かけてつくった放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)が実際には使われなかったことがある。今度は大丈夫なのか。

いくらシステムを作っても本当に役立つには、元になる情報収集能力や非常用の電源も含め携帯基地局の健全性、それにスマホのバッテリーが十分であることが前提となることを忘れてはならない。このニュースを伝えたメディアは、当局の発表をまるごと伝えるだけで、なんら問題意識は感じられない書きぶりのものがほとんどだった。役所や企業のやることに批判的精神で取材し、住民や消費者に代わって実際的かどうかを確認する意識が近頃のメディアには欠けている。

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