日本エネルギー会議

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美味しくない福島

宮崎県の知事であった東国原氏はトップセールスという言葉を定着させたほど宮崎県の産物を全国的な知名度に押し上げた。福島県でも震災後、今日に至るまで内堀知事が先頭に立って福島県産の農産物や水産物を風評被害から立ち直らせるために奮闘している。テレビや新聞では知事が各地のイベントや知事室で県産の食品などを食べて「おいしいですね」と驚く場面を毎週のように流している。

福島県はシーズンになるとJR福島駅に桃娘が出るほどの桃の産地で、福島市の西のはずれにはフルーツラインと呼ばれる道路があり、桃のシーズンには果樹農家が数多くの露店を出す。しかし最近はそこに行って試食させてもらっても、買って帰っても以前のような甘くてジューシーな桃ではない。知事に対して福島県民の食べている物がちっともおいしくないと直言する人はメディアを含めて誰もいないようだ。まったくの個人的感想だが、はっきり言って近頃、福島県の中通りで暮らしていて入手出来る食材あるいは飲食店で食べられる料理は美味しくない。その理由は三つあると思う。

ひとつは温暖化によって桃の出来が悪くなっていること。農産物は、かたちは大きく色もよいのだが、甘味が少ない、香りがしない、皮が厚くて硬い、水分が不足、きめが荒いのである。これは特に果樹や野菜について言える。魚や貝など海産物についても海水温や海流の変化で農産物と同じように大きいばかりで味が悪くなっている。中には漁獲量が著しく減少したものもある。

二つ目に中国や東南アジアなどが日本産の食材を爆買いするようになった。福島県の農産物の輸出量は震災原発事故前より増えている。高級食材の価格が高騰しほとんどが輸出にまわり、国内に質の良いものが出回らなくなった。国内の高級な料理店でも食材を確保するのに苦労していると思われる。海外の日本食ブームも痛し痒し。美味しいものが正しく評価されるのは良いことだが、実質所得があがらない一般の人にとって美味しいものは手の届かないものになっている。福島牛は地元のブランド肉だが、スーパーに行っても外国産の牛肉に押されて少ししか置いていない。しかも値段は外国産の倍だ。スーパーで生のうどんをひと玉たったの19円で買っている客が150グラム2500円の福島牛のステーキ肉を買うだろうか。

三つ目は、世代交代で調理人の腕が落ちていること。高齢の調理人がやっている町の食堂は美味しいが、外食チェーン店の氾濫で、個人の店が少なくなり、県民の味覚がチェーン店の味に慣らされてしまった。最近地元のラーメンチェーン幸楽園が「4人でたらふく三千円」というテレビCMをやるようになった。外食チェーン店では、客を確保するためにますます質より量に向かっている。福島県の駅弁で人気ナンバーワンが郡山駅の「海苔弁」(白いご飯が海苔で覆われている弁当)だというのも理解出来るような気がする。県内外を問わず、原発事故による風評被害のことを慮ってか、福島の食について誰も本当のことを言わなくなっている。

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