日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

再稼働に固執する理由は何か

日本原電は福島第一原発の事故後8年間、1ワットの電気も生み出していないが基本料金として累積1兆円もの収入を契約先の電力会社から支払われたという報道があった。日本原電は卸売電力で所有する原発は東海に2基、敦賀に2基。東海の1基は2001年から2030年まで30年間の工期で廃炉作業が続いているが、放射性廃棄物の処分先が決まっておらず終わりが見えない。敦賀の1基は廃炉が決定、もう1基は新しく大型であるが新規制基準の審査で断層問題が出て膠着状態。唯一、東海第二原発(1978年運転開始)が運転期間の延長も含め審査をクリアーし、追加工事に取り掛かろうとしている。だが、これも上振れが予想される工事資金調達や地元住民の理解の問題が残されている。

商業炉の廃止措置経験を活かす福島第一原発の廃炉支援やアメリカの電力会社との合弁事業で運転保守に係るアドバイザリー業務なども手がけているが、会社を支えるまでにはなっていない。やはり110万キロワットの東海第二原発の再稼動を果たし本業で電力料金収入を得ることが企業存続の大前提となる。ここはなんとしても高いハードルを乗り越えなくてはならないだろう。

だが、時間が経つほど運転可能な期間は短くなり、工事費や維持費が嵩んで財務状況は苦しくなる。運営資金や工事にかかる費用を金融機関から借りる際に電力各社が保証するといっても限度はある。あまりに見込みのないところに保証を積み重ねれば電力会社自身が株主からクレームをつけられる恐れがある。

9電力各社も原発を再稼動したところは一息ついたが、そうでないところは原子力部門だけを取れば日本原電とさほど変わらない状況で、本体の経営を圧迫する要素になっている。原子力規制委員会は審査によって再稼動の時期が遅れることや、再稼動した原発でも予定通りテロ対策が完成しない原発は停止命令もいとわないという姿勢を崩していない。現在、建設中というより既に工事がほぼ終了している原発が2基あるがこれを所有している中国電力と電源開発は発電開始出来ないことにより、得られるはずだった利益を何年間も逸失し続けている。

再稼動を目指している原発は運転期間の数え方を変えない限り、時間が経つにつれて運転可能期間が短くなり、維持管理費と工事費の増加によって再稼働した場合のメリットがどんどん失われていく。再稼働しても追加工事費などが回収不能になるタイムリミットは何時なのか、社員や株主などステークホールダーに対してどの会社も明らかにしていない。赤字覚悟で再稼動すれば電力自由化後の体力を奪うことになるがそれでもあえてやらなければならない理由があるのだろうか。

原発を再稼動出来ないこの状況は違法なことをしない限り、徐々に料金原価や財務諸表に反映されていく。その結果は電気料金の値上げであり、新電力など競争相手に敗れ顧客を失うことで、さらに財務体質を悪化させてしまうことになる。これでは火力発電、送配電などにおける世界屈指の技術で海外事業に打って出るなどこれから電力会社が取り組む新事業の足を引っ張ることになる。
ここまで我慢強く再稼働や運転開始を目指す理由を電力会社は明らかにしていないが推測は出来る。それは、東海第二にせよ、他の再稼働や運転開始出来ていない原発にせよ、ひとつでも諦めてしまえば、そのとたんにパンドラの箱が開いて、回収不能の投資など大量の不良資産や払いきれない債務保証が表面化してしまい経営破綻が現実になることだ。従来、株式投資の世界で電力株は常に安定優良銘柄であったが、最近では「9電力会社への投資はリスクが高い」の意見もある。

東京電力は福島第一原発の事故を起こしたことで国の支援を仰ぎ、実質的に国の支配するところとなったが、残りの電力会社の何社かと日本原電は大事故を起こさなくても、このまま行けばそうなる可能性がある。
   
(参考)
3分でわかる。今日の投資戦略 電力株の投資判断

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter