日本エネルギー会議

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電力とグローバリゼーション

かつてジョセフ・E・スティグリッツやロバート・ギルピン等の経済学者が指摘したように、カネ、モノ、ヒト、情報の自由な移動によるグローバリゼーションが広がるにつれて世界中の人々が冷酷な競争に巻き込まれ、勝者と敗者による格差社会が出現した。

長い連休中に成田空港で海外旅行から帰ってきた家族にテレビのインタビュアーが、後半はどうするのかと質問すると「少し休んでからこんどは国内旅行」と答えるのを見て、世の中にはこんなリッチな家族もいるのだと驚いた人もいたはずだ。

国家も人々を守る余裕はなくなり同じように市場に従うようになった。疲れ果てた人々は失業や低賃金、犯罪や非合法移民の増加はグローバリゼーションのせいであると考え、世界各地で反グローバリズムのうねりが起きている。
電力の世界ではグローバリゼーションが進んだとしても、島国の日本では外国から電力は入ってこないのでグローバリゼーションとは無縁と考えられた。資本としては香港の投資グループが株を買い占めることで北陸電力を買収ようと画策したこともあったが、この時は志賀原発があることがリスクと見られ買収は見送られた。

しかし、グローバリゼーションは今もじわじわと電力業界に押し寄せている。
需要が伸びず、かつての独占時代ように利益の出なくなった電力会社から海外の資本は厳しい目を向けている。国際競争に晒されている国内企業は電力料金の負担をどうやって減らすか日夜考えている。あまりに電力料金が高ければ企業は自家発を考えるか海外に逃避してしまう。電力会社にとって売上減少につながる深刻な問題だ。

再生可能エネルギーの分野でも利益に目ざとい海外資本による日本国内での開発が盛んに行われている。メガソーラーのパネルは中国製が国内を席巻しており、風力発電の設備はこれまた欧州製が圧倒している。これから伸びると思われる蓄電池の分野においても、海外企業は日本進出を狙ってくるはずだ。車の電動化についても目が離せない。これに対して、少数ではあるが海外の電力供給事業に乗り出そうとしている大手電力会社もある。

原子力の分野でも今後の廃炉工事に外国企業が参入してくることは十分に考えられる。福島第一原発の事故以降の日本の原子力人材やメーカーの原子力部門の弱体化を外国企業につけこまれる可能性がある。日本の企業も外国人技術者の採用に向かわざるを得なくなるのではないか。新型炉の開発やバックエンドに関しても国際共同計画が広がる傾向にある。

SDGsのような動きもグローバリゼーションのひとつと考えられる。石炭火力に対する融資を減らす、あるいは断るのは国際金融業界では当たり前になっている。また、海外の企業に倣ってRE100(使用電力の100パーセントを再生可能エネルギーにする)を宣言する国内企業も増えつつある。

日本のエネルギー安全保障をしっかり確保しつつ、電力のグローバリゼーションをどのように乗り切っていくかを大きな課題として捉える必要がある。

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