日本エネルギー会議

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選挙公約

参議院選挙がスタートした。各党の公約を見ると共通して言えるのは、有権者の関心の高いものを公約の上位にしていることだ。与党の自民党、公明党ですらそうだ。年金問題や外交など直近の話題となったものが並び、原発や環境問題は下位でしかない。エネルギー安全保障、温暖化など、やがて国民の生活に大きな影響を与える政策決定を先送りしたものとなっている。有権者が関心のあるものを真っ先に取り上げるのは当然だと思うかもしれないが、これは一種のポピュリズムだ。
本来、政治家は中長期的に最重要課題とは何かを考え、政策を打ち出して国民に選択を迫るのが役割である。国民に迎合ばかりしていては国の進路を誤ることになる。話題に飛びついているばかりでは後追い政治だ。公開討論で質問するメディア代表も年金問題では各党首に事細かに質問し説明も求めるが、原発に関しては挙手で済ませてその理由も聞かない。

党首たちも国土強靭化、災害復旧については強調するが、根本原因である温暖化対策には触れず、鍵となる石炭火力発電の廃止や原発再稼働の必要性は語らない。自民党以外は原発の新設に否定的だが、それならどのようにパリ協定の目標に向かって痛みに耐えて取り組んでいくか根拠のある説明が必要だ。各党共通して、温暖化防止に対して電力における再生可能エネルギーの割合増加に焦点を当てているが、発電以外にも二酸化炭素排出源があり、この対策にはほとんど言及していない。

参考までに、各党がエネルギー、環境の問題について公約でどのように取り上げているかを示す。(可能な限り省略し、簡潔な表現とした)また、それに対する私のコメントを付す。

自民党
・徹底した省エネ・再エネの最大限の導入、原発依存度の可能な限りの低減方針を堅持。2030年エネルギーミックスの確実な実現、2050年に向けたエネルギー転換、脱炭素化を目指す。
・原子力規制委員会で規制基準に適合すると認められた場合には、立地自治体などの関係者の理解と協力を得つつ、原発の再稼働を進める。
・2030年温暖化ガス26%削減、2050年80%削減、今世紀後半のできるだけ早期の脱炭素社会の実現を目指す。
(私のコメント)
2030年のエネルギーミックスは再生可能エネルギーの前倒し達成、原発の大幅未達が見えているのに元のままであり、公約としてふさわしくない。また、先日のメディア主催の討論会で安倍総裁は「自民党、政府も現時点で新増設は想定していない」と述べた。これではミックスにおける原発の目標比率が達成出来る可能性はない。(公約か総裁発言かどちらかが嘘)
政権与党にもかかわらず、温暖化に対する危機感があまり感じられない。

公明党
・再エネ、省エネを経済成長の柱と位置付け、「原発に依存しない社会・原発ゼロ社会」をめざす。
・事故で原発の安全性に対する信頼は崩壊。大損害を考慮すると発電コストは安くない。「再生可能エネルギーの普及」「省エネルギーの促進」「火力発電の高効率化」の3本柱で持続可能な経済社会の構築と経済成長を両立させる。
・原発の新規着工は認めない。40年を超える原発の運転を制限する制度を厳格に適用する。新規制基準を前提に、国民と立地地域住民の理解を得て再稼働するか否かを判断する。新基準は「バックフィット」制度や、活断層などの徹底的調査が盛り込まれ、今後も不断の努力を必要とするも世界一厳しい新基準による規制は信頼に足る。
・「もんじゅ」は廃炉を進める。使用済み核燃料の再処理については、「直接処分」も含めて見直しをする。
・メタンハイドレートなど、次世代エネルギー資源の開発も推進する。
(私のコメント)
将来的に原発ゼロと言っているが、三本柱だけでは原発ゼロは当分見込めない。特に高効率でも火力は温暖化ガスを排出する。火力発電に対する甘さがある。また、メタンハイドレートは採掘が商業ベースになるにはまだまだかかる。さらにメタンは二酸化炭素以上に強い温室効果ガスである。安倍総理と同じように、新規制基準は世界一厳しいと言っているが、世界一かどうかは疑問。

立憲民主党
・原発ゼロを実現するため、原発ゼロ基本法を制定する。原発の新増設(建設中、計画中を含む)は中止する。原発の40年廃炉原則を徹底し、急迫かつ真の必要性が認められず、国の責任ある避難計画が策定されない限り再稼働は認めない。
・エネルギーの地産地消を推進し、地域活性化と雇用創出を図る。
・パリ協定実現に向け、省エネルギーの徹底、再生可能エネルギーの最大限の導入、化石燃料(特に石炭)依存からの脱却などにより、2050年に80%以上の温室効果ガス削減を目指す。
・原子力政策を推進してきた国の社会的責任を認め、原子力災害からの復興及び創生を強力に推進する。健康や将来に対する不安払拭のため、自主避難者も含め、健康調査の強化、母子・父子避難者への支援など、生活再建を進める。
(私のコメント)
再稼働について、急迫かつ真の必要性があれば認めるとしたことは現実的な考えで評価出来る。国の責任ある避難計画という意味が不明。省エネルギーの徹底、再生可能エネルギーの最大限の導入だけでは、火力発電依存脱却は現実的に無理。地産地消はよいが、大都市はどうするのか。自動車の電動化による省エネ、温暖化ガス抑制に触れていない。健康調査や避難者支持に関しては実態をよく調べる必要がある。

国民民主党
・原子力エネルギーに依存しない社会のシナリオを実現するため、野心的な温室効果ガス削減目標の設定、再生可能エネルギーへのシフトによる分散型エネルギー社会の実現、省エネルギー社会の実現を目指す。
・2030年代原発ゼロに向け、あらゆる政策資源を投入する。使用済核燃料の最終処分に関する国の責任の明確化、廃炉、使用済核燃料の減容化等を担う労働者・技術者の確保と育成、廃炉後の原発立地地域における雇用・経済政策を国の責任で推進する。
・火力発電の最新鋭化・蓄電池技術開発等を国家プロジェクトとして推進する。
(私のコメント)
火力発電は最新鋭化しても生き残りは困難。これから建設するのはかなりリスクがある。分散型エネルギーにしても短所もある。どうカバーするかは示されていない。原発ゼロに向け、あらゆる政策資源投入としているがどのような内容なのか不明。

日本共産党
・原発ゼロ基本法案を成立させる。避難計画抜きの再稼働は許さない。エネ庁は太陽光・陸上風力ともにコストは原発より安いと認めており、原発低コスト論は破綻。原発の再稼働を中止し、廃炉に移る。核燃料サイクルから直ちに撤退。再処理工場などの関連施設を廃止する。
・福島は除染が不十分で、生活環境も整っていないため住民が戻れない。にもかかわらず国は避難指示を解除。被害者支援と賠償をすべての被災者が生活と生業を再建できるまで、国と東電の責任で行わせる。
・東電まかせにせず国の責任で福島原発事故の収束に全力をあげる。徹底した情報公開を求め、放射能汚染水の海洋放出をやめる。放射能測定体制を続け、福島県民の健康をまもるため国が長期の健康診断を実施する。
・2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロのため、脱炭素・再生可能エネルギーへの大胆な転換をする。2030年までに電力の4割を再生可能エネルギーでまかなうため省エネ・節電の徹底と再生可能エネルギー大幅導入を進める。その担い手に中小企業・農林漁業者も参加し、循環型の地域経済の推進につなげる。電力会社に再生エネルギー全量受け入れを求め、国が買い取り価格を保証する。自然・生活環境を破壊し、防災にも反する乱開発を規制し、事業の健全な成長をうながす。
(私のコメント)
原発のコストが安くなくても、原発を必要とする可能性がある。安くないから止めるというのは理由のひとつでしかない。住民が戻れないのは避難指示を解除した所が住民が戻れないほど整っていないからだけでなく、住民側の都合もある。汚染水問題、放射能測定問題も費用対効果をまったく考えないわけにはいかない。感情的にはそうだが科学的なつめと総合判断が必要。循環型の地域経済につなげるのはよいが、大消費地などの問題は残る。再エネ全量買取には設備拡充も必要。乱開発が問題なのはそのとおり。

日本維新の会
・脱炭素社会の推進を目指し、先進国をリードし、世界規模で進めることを提案する。
・先進国をリードする脱原発依存体制の構築、原子力損害賠償制度の確立、原発稼働に係る関係自治体の同意を法制化、原発再稼働責任法案、電力自由化の一層の推進、「脱炭素社会」の推進、水素エネルギーやメタンハイドレード等海洋資源の開発、実用化を推進する。
(私のコメント)
さまざまな提案をしているが、いずれも内容が不明でそれらのつながりもない。再生可能エネルギーをどのように育成するかビジョンがない。原発については法制化を条件に再稼働容認のようにも見える。

令和維新組
・原発を即時禁止とする。大地震による安全維持が出来ず、事故が起これば、国土を半永久的に汚染し、人々の生業を奪うリスクがあるため。
・エネルギーの主力は火力にする。自然エネも拡大する。
・国の積極的投資で日本の廃炉技術を世界最先端にする。
・原発事故による被災者・被害者への支援の継続、拡充をする。
(私のコメント)
原発即時禁止の穴埋めはどうするのか。火力中心では安全保障上、きわめて脆弱な国のままだが、それに対する対策がない。火力を主力にすれば温暖化ガス排出抑制の国際約束はどうなるのか。整合性のある政策とは思えない。

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