日本エネルギー会議

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石炭火力の生き残り策

温暖化の影響が深刻になるにつれ、石炭火力に対する風当たりはますます強くなっている。先進国では建設はもちろん操業に対しても禁止する動きがある。二酸化炭素を多く出すとはいえ、その発電コストの安さ、燃料となる石炭の埋蔵量の豊富さ、燃料貯蔵の容易さ、速やかな立ち上がり、出力変動が容易であることから、日本では高効率なものを開発して発電量に対する二酸化炭素排出量を抑え、石炭火力を存続させようとしており、再生可能エネルギーを開発する際にも、その出力変動をカバーするため石炭火力はなくてはならない存在として、欧州などと違う考え方をしている。

中国やインドなど経済発展を遂げつつある国々では、原発や再生可能エネルギーに熱心に取り組んでいるものの、現実の電力生産には旧式な効率の悪いものも含め石炭火力を主に使っている。石炭火力を全面的に禁止することには、途上国を始めとして大きな抵抗があると考えられるため、これからも石炭火力を使うための手法を考えるニーズはある。

高効率化はもっとも現実的かつ実証済みの方法で、日本はこの技術開発によって石炭火力を使い続けようとしている。また、途上国などにもこの技術を売り込もうとしている。要は燃料一単位に対する発電量を多くすることで同じ出力を出すのに二酸化炭素の排出量を何分の一かに出来る技術である。古い石炭火力を建て替える場合にこの高効率な設備とすることで結果的に二酸化炭素を減らそうというものだ。この考え方は現実的なのだが、温暖化ガス排出に厳しいヨーロッパ諸国はこれもダメだとする可能性がある。

次に日本が試みているのが、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage )であり、排出された二酸化炭素を捉えてそれを地中の空間に貯蔵する方法である。しかし、それに見合った条件の地下の条件の整った場所を発電所の近くに見つけることが必要で貯蔵容量も有限であるため問題が多い。電力会社、エンジニアリング企業、資源関連企業などが出資して2008年に日本CCS調査株式会社を設立し、現在、北海道苫小牧市で実証試験をしている。海外でもいくつかの試験が行われているが、これで全部の石炭火力が二酸化炭素問題をクリア出来るとは考えられない。

CCU(Carbon Capture and Utilization )は排出された二酸化炭素を有効に消費しようとする方法で、政府の有識者懇談会が今年4月にまとめた提言で、脱炭素社会の実現に向けて日本が長期的に取るべき方策として挙げられている。二酸化炭素を効率的に回収し燃料や原材料として再利用することは理想的な方法ではあるが、技術の確立、商業的に成り立つ水準へのコスト低減が課題だ。これもいくつかの事例がある。オランダでシェル石油が植物の生産促進に二酸化炭素を使っているとの情報がある。日本では二酸化炭素から水素を作り出す研究などが行われている。

以上のような開発途上の方法に対し、すぐにでも出来るのがミティゲーションという方法である。ミティゲーションとは、大規模な開発などによって損なわれる自然に見合った規模の自然をなんらかの方法で復元させ,破壊を保全で相殺する方法で、環境面での等価交換ともいえる考え方だ。日本でも26年前に静岡市で制定された「興津川の保全に関する条例」があり、大規模開発を行なう事業者に失われる森林面積と同等以上の森林を流域内に確保・復元するよう義務づけている。このほか広島湾での人工干潟の造成の例もある。

石炭火力発電所が排出する二酸化炭素に対してそれに見合う(出来なければそれに比例した)二酸化炭素吸収の手立て、例えば国内外の荒地に植林をすることで石炭火力発電を環境保全上、正当化する。途上国などで乱伐された森林の復活でもすれば一石二鳥だ。方法や場所は自由にすることで、最もコストの安いものが選択出来る。直接やらなくても例えば、アマゾンの熱帯雨林を開発から守るための活動に資金を出すことでもよいと考えられる。

さまざまな方法で石炭火力を生き残らせようとするとき、最大のネックは発電コストが上昇することだ。すでに欧米では石炭火力は最も安い電源の座をメガソーラーや風力発電などの再生可能エネルギーに明け渡し始めている。
そこで石炭火力については、上記のような二酸化炭素排出抑制対策分をコストから差し引くことを国内外で認めてもらうことである。追加安全対策が必要となった原子力発電でも昨今、温暖化抑制貢献分をコストから差し引く要望が出ている。

今後、電源のコスト評価において温暖化防止貢献分をマイナスするといった国際ルールを取り決めるのも一方法である。鉄鋼業や化学産業など二酸化炭素抑制が技術的に困難なものに対しても、このミティゲーションの考え方を適用することが考えられる。

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