日本エネルギー会議

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先鋭化する温暖化懸念(13)

熱波に続いて我々が襲われることになる温暖化の深刻な影響は食糧と水をの不足だ。IPCCが作成した特別報告書は産業革命以降、陸地の気温は地球全体の2倍近いペースで上昇し洪水や干ばつなどが起きている。気温が3℃上昇すると作物の成長量は12~18%程度減少すると予測され、トウモロコシや小麦の収穫量が減る地域が続出、今世紀半ばには穀物価格が現在より最大23%も上がる恐れがあると警告している。 

世界でも最も高い穀物自給率279%を誇っていたオーストラリア政府は、今年、干ばつの影響で12年ぶりに海外からの小麦輸入を許可した。温暖化は病害虫の発生も起こす一方、生態系が変わることで昆虫が減って植物が交配出来なくなるという今までは考えもしなかったことが起きる。温暖化すれば植物の光合成活動が活発化するのではないかとも思えるが、光合成活動は気温35℃で頭打ち、40℃で停止だ。

穀物、野菜などと違い果樹は移動させることが困難で、数十年にわたり生産を続けなければならないため、果樹の温暖化対策はすぐには出来ない。果樹農園にとって温暖化の影響はより深刻である。福島県でも従来から栽培していた果物が不調で、震災復興事業ではイチゴやトマトに加えてハウス内でのマンゴー、バナナなどトロピカルな果物の栽培が増えている。

スーパーに行けば天候不順で野菜や果物が高値になっているが、全国各地はもとより外国からも買い付けているため、日常はそれほど温暖化の影響は感じない。しかし、地元のJAの直売所に行くと最近は空いている棚が目立つし、出ている野菜や果物も甘味が少ない、皮が硬いなど出来が悪いことがわかる。直売所とはいうものの県外産が多くなっている。庭でプランター栽培をしているトマト、ナス、きゅうりもかつてのようにうまく作れない。

自然はいろいろな所で食を通して温暖化の影響を示しているのだが、人々は気持ち的に脅威とまでは感じていないようだ。いまだ世界の人口が増加に向かっているとすると、食料不足で食料価格が高騰し貧しい人々が命を奪われるという悲惨なことが予想されるが、あまりに大きな話で誰もが自分自身の問題とは捉えていないようだ。

書店に行くと、かつてはあった温暖化に関する本が一冊もないことに気づく。
そういえば最近でこそヨーロッパの熱波やアマゾンの熱帯雨林の焼失などの報道があるが、ここ数年は温暖化関連のニュースは低調だった。我々は自分で考えずにメディアの情報に依存しきっているようだ。野菜を食べたり、野菜を作ったりして感じたことから何故だろう、どうなるのだろうと考えるべきではないか。自分の舌を信じ事実から考えを組み立てるべきであって、メディアに問題意識までを依存し、しかも結論だけを知ろうとするのはやめなくてはならない。

戦時中にご近所に戦死者の出た家庭が増え配給が減っても、連戦連勝ばかりの報道を受けて日本の勝利を疑わず最後はひどい目に遭い、皆が悪かったのだからそれも仕方がなかったと思った日本人。今の日本人も同じではないか。

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